一般診療の現場で日々多くの発熱患者と向き合っていると、インフルエンザの流行期には「もっと早く来ていただければ」と思うケースと「もう少し後の方が正確だった」と思うケースの両極端に出会います。医師の視点から、インフルエンザ診断における各診療科の役割と、受診する側に意識してほしい医学的側面についてお話しします。まず、多くの患者様が内科を受診されますが、私たち内科医が診察室で最も注視しているのは、単なる体温計の数字ではありません。患者様の顔色、呼吸の速さ、そして聴診器から聞こえる肺の音の雑味です。インフルエンザはウイルス感染症ですが、大人の場合はそれによって免疫が低下した隙を突いて細菌が入り込む二次性の肺炎が最も恐ろしい合併症です。全身を網羅的に診る内科は、この「肺炎の芽」を早期に見つけることに長けています。一方で、耳鼻咽喉科を受診されるメリットも強調しておきたいと思います。耳鼻科の先生方は鼻腔のスペシャリストであり、迅速検査で使用するスワブ(綿棒)を、最もウイルスが集中している上咽頭の正しい位置に挿入する技術において、非常に高い精度を持っています。検査の痛みに関しても、鼻の構造を知り尽くしているからこそ、極めてスムーズに行われることが多いです。また、インフルエンザに付随して中耳炎や副鼻腔炎を起こしやすい方は、耳鼻科の受診が第一選択となるべきです。次に、検査のタイミングという医学的制約についてです。多くの迅速検査キットは、ウイルス量がある程度増えないと陽性反応が出ません。私たちは、患者様が「何時に熱が上がり始めたか」という情報を非常に重視します。発熱後すぐに受診されても、検査結果は「陰性」と出ることが多く、そうなると翌日に再検査が必要になり、患者様の身体的・経済的負担が増えてしまいます。ただし、例外もあります。高齢者の方や重度の糖尿病を患っている方など、重症化リスクが高い場合は、検査結果を待たずに治療を開始することもあります。このように、診療科の選択や受診のタイミングは、一人ひとりのリスクと現在の病状に基づいてカスタマイズされるべきものです。私たちが望むのは、患者様が自己判断で「もう一日様子を見よう」と無理を重ねることではなく、まずは電話で現在の状況を正直に伝え、プロの判断を仰いでいただくことです。インフルエンザは適切な診療科で、適切なタイミングに治療を開始すれば、決して恐ろしい病気ではありません。現代医学の恩恵を最大限に受けるために、私たち医師を賢く活用していただきたいと願っています。
医師が語るインフルエンザ診断における診療科の役割