子供やパートナーが、「目が痛い」と、まぶたを赤く腫らして帰ってきた。診断は「麦粒腫(ものもらい)」。そんな時、看病する側として気になるのが、「自分や他の家族にうつるのではないか?」という心配です。結論から言うと、日常生活を送る上で、過度に心配する必要はありません。麦粒腫は、はやり目(ウイルス性結膜炎)のように、空気や飛沫を介して簡単に人から人へとうつる病気ではないからです。麦粒腫の原因は、主に黄色ブドウ球菌という、私たちの体に普段からいる常在菌です。これが、何らかのきっかけでまぶたの腺に入り込んで炎症を起こすものであり、特殊な病原体が外部から侵入してくるわけではありません。したがって、感染者と同じ部屋にいたり、会話をしたりするだけで感染することはありません。しかし、「絶対にうつらない」と100%断言できるわけでもありません。理論上、感染のリスクがゼロではない状況も存在します。それは、感染者の「膿」に直接的、あるいは間接的に触れてしまった場合です。麦粒腫の膿の中には、原因となっている細菌が大量に含まれています。もし、感染者が膿の出ている患部を触った手で、ドアノブやテーブル、リモコンなどに触れ、それを別の家族が触り、さらにその手で無意識に自分の目をこすってしまった…というようなケースでは、細菌が目に運ばれてしまう可能性があります。これは非常に稀なケースですが、こうした接触感染のリスクを減らすために、家庭内でいくつかの配慮をしておくと、より安心です。まず、最も重要なのが「タオルの共用を避ける」ことです。手拭き用のタオル、洗顔用のタオル、バスタオルは、麦粒腫が治るまでの間は、本人専用のものを用意し、他の家族とはっきりと分けましょう。こまめに洗濯することも大切です。また、本人には、患部をむやみに触らないように、そして、もし触ってしまった場合は、すぐに石鹸で手を洗うように伝えてください。枕カバーも、膿が付着する可能性があるため、こまめに取り替えるのが望ましいでしょう。これらの対策は、他の家族への感染を防ぐという目的もありますが、それ以上に、本人が反対側の目に菌をうつしてしまう「自家感染」を防ぐ上で、非常に重要です。過剰な心配は不要ですが、正しい知識に基づいた、思いやりのある衛生管理を心がけましょう。
家族が麦粒腫に。家庭内感染は本当に心配ない?