それは、少し仕事が立て込んでいた週の終わりのことでした。朝起きたときに喉に小さな違和感があり、「乾燥かな」と思いながらいつものように洗面所でうがいをしていたのです。ふと、口を大きく開けて鏡の奥を覗き込んだ瞬間、私は凍りつきました。喉の奥、軟口蓋から扁桃のあたりにかけて、まるで赤いインクを散らしたような不気味な斑点がいくつも点在していたのです。痛みはそれほど強くありませんでしたが、見た目のインパクトにパニックになりかけました。すぐにインターネットで「喉、赤い斑点」と検索すると、そこには風邪から難病まで恐ろしい単語が並び、不安は増すばかりでした。その日は土曜日でしたが、私は迷わず診療している耳鼻咽喉科を予約しました。待合室で待っている間、自分の指で喉に触れてみたり、何度も唾を飲み込んで違和感を確認したりして、生きた心地がしませんでした。診察室に呼ばれ、医師に「喉に赤い点々があります」と告げると、先生は慣れた手つきで鼻から細いカメラを挿入しました。モニターに映し出された私の喉は、肉眼で見るよりもさらに赤みが鮮明で、ところどころ血管が浮き出ているようでした。医師の診断は、意外にも落ち着いたものでした。結果として私の症状は、風邪のウイルスによる「点状出血」を伴う咽頭炎でした。過労で免疫力が落ちていたところにウイルスが入り込み、粘膜の血管が一時的に脆くなって出血点を作っていたようです。医師からは「見た目は派手ですが、炎症自体はそれほど重くありません。しっかり休養して加湿をすれば数日で消えますよ」と言われ、その言葉だけで心の重荷がふっと軽くなったのを覚えています。処方されたのは、粘膜を保護するうがい薬と軽い消炎剤だけでした。帰宅後、先生のアドバイス通り部屋の湿度を六十パーセントに保ち、温かい飲み物を摂って泥のように眠りました。すると、二日後の朝にはあれほど鮮明だった赤い斑点は薄いピンク色に変わり、三日目には跡形もなく消えていました。今回の体験を通して痛感したのは、自分の体の変化を過剰に怖がらず、かといって放置もしないバランスの大切さです。喉の赤い斑点は、私にとって「これ以上無理をしないで」という体からの切実なブレーキだったのだと感じています。インターネットの情報は参考にはなりますが、最終的に自分を救ってくれるのは専門医の客観的な診断と、それに基づいた適切な休養です。もし、今まさに鏡を見て絶望している方がいたら、どうか一人で悩まずに病院へ行ってください。原因が分かるだけで、身体の回復力も変わってくるものです。私のこの記録が、誰かの不安を和らげる小さな助けになることを願っています。