部屋の隅を、小さな黒い点が素早く横切った。潰してみると、それは紛れもなく小さなゴキブリだった。多くの人は、「小さいから大丈夫」「一匹だけだから」と、つい油断してしまうかもしれません。しかし、その考えは非常に危険です。ゴキブリの赤ちゃん、すなわち幼虫を一匹でも家の中で見つけたということは、あなたの知らない場所で、すでにゴキブリの繁殖活動が始まっていることを示す、何よりも確実な証拠なのです。ゴキブリの赤ちゃんは、親から独立して単独で家に侵入してくるわけではありません。彼らは、家の中のどこかに産み付けられた「卵鞘(らんしょう)」と呼ばれる卵のカプセルから孵化します。つまり、赤ちゃんが一匹いるということは、その近くに孵化したばかりの兄弟たちが、まだ何十匹も潜んでいる可能性が極めて高いのです。クロゴキブリの場合、一つの卵鞘から約20〜28匹、チャバネゴキブリの場合は約30〜40匹もの幼虫が一度に生まれてきます。あなたが目撃した一匹は、その大集団のほんの一角に過ぎません。さらに深刻なのは、卵が孵化したということは、その卵を産んだ親ゴキブリ(メス)が、あなたの家を「安全で、餌や水が豊富にあり、繁殖に適した場所」だと判断したことを意味します。親がいるということは、他にも複数の成虫が潜んでいる可能性があり、今後も次々と卵が産み付けられていく危険性をはらんでいます。ゴキブリの赤ちゃんは成虫に比べて体が小さく、ほんの1ミリ程度の隙間からでも侵入できるため、行動範囲も広いです。彼らは脱皮を繰り返しながら成長し、数ヶ月後には立派な成虫となって、今度は自らが繁殖活動を開始します。一匹の赤ちゃんの発見は、まさにゴキブリ一家による家の乗っ取り計画の始まりを告げる、静かな、しかし確実な警報なのです。このサインを見逃さず、すぐさま本格的な対策に着手することが、後の大発生を防ぐための唯一の道と言えるでしょう。
ゴキブリの赤ちゃんを一匹見たら?それは危険の始まりを告げるサイン