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RSウイルスで喉が痛い時の正しい対処法
大人がRSウイルスに感染し、喉に激しい痛みがある時、そのつらさを少しでも和らげるためには、どのような対処をすれば良いのでしょうか。RSウイルスには特効薬がなく、治療はあくまで症状を緩和するための対症療法が中心となります。家庭での適切なセルフケアが、回復を早めるための鍵となります。まず、最も大切なのは、「喉を潤し、刺激を避ける」ことです。喉の粘膜が乾燥すると、痛みはさらに悪化します。こまめに水分を摂取することを心がけましょう。ただし、オレンジジュースのような酸っぱいものや、熱すぎる飲み物、炭酸飲料は、喉にしみて痛みを増強させるため避けるべきです。人肌程度の温度の、麦茶やハーブティー、スポーツドリンクなどがおすすめです。部屋の空気が乾燥しないよう、加湿器を使用するのも非常に効果的です。マスクの着用も、自身の呼気に含まれる湿気で喉の湿度を保つのに役立ちます。次に、「食事の工夫」です。喉の痛みが強い時は、固形物を飲み込むのが困難になります。無理に普段通りの食事を摂ろうとせず、喉ごしの良い、柔らかいものを選びましょう。例えば、おかゆや雑炊、よく煮込んだうどん、豆腐、茶碗蒸し、プリン、ゼリー、アイスクリームなどが適しています。香辛料の多い刺激的な食べ物や、味の濃いものも、喉への負担となるため避けましょう。そして、意外と効果的なのが「うがい」です。うがい薬を使うのも良いですが、単純に水やぬるま湯でうがいをするだけでも、喉の粘膜についたウイルスや分泌物を洗い流し、潤いを与える効果があります。痛みを和らげるためには、鎮痛薬の力を借りるのも一つの手です。市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)は、喉の炎症を抑え、痛みを軽減するのに役立ちます。また、喉の痛みに特化したトローチや、スプレータイプの消炎薬なども、一時的に痛みを麻痺させてくれる効果が期待できます。もちろん、これらのセルフケアを行っても症状が改善しない、あるいは水分さえも摂れないほど痛みが強い場合は、我慢せずに医療機関を受診してください。点滴による水分補給など、専門的な治療が必要になることもあります。
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夏バテのサイン、その吐き気の原因とは
夏の厳しい暑さが続くと、体は様々な不調をきたします。食欲不振や全身の倦怠感と並んで、多くの人を悩ませるのが「吐き気」や「むかつき」といった胃腸の症状です。これらは、夏バテが引き起こす代表的なサインの一つであり、その背景には、夏の過酷な環境に対応しようとする体の働きが、かえって不調を招いてしまうという、いくつかのメカニズムが隠されています。まず、大きな原因として挙げられるのが、「自律神経の乱れ」です。私たちの体は、自律神経の働きによって、体温や消化、血流などを常に一定の状態に保っています。しかし、夏の時期は、屋外の猛暑と、冷房が効いた室内との激しい温度差に、一日中さらされることになります。この急激な温度変化に体が対応しようとすることで、自律神経のバランスが崩れてしまうのです。自律神経は、胃や腸の働きを直接コントロールしているため、そのバランスが乱れると、胃酸の分泌が過剰になったり、逆に胃のぜん動運動が低下したりします。その結果、胃もたれや胸焼け、そして吐き気といった不快な症状が引き起こされるのです。また、「冷たいものの摂りすぎ」も、胃腸に直接的なダメージを与えます。暑いからといって、アイスクリームやかき氷、冷たい飲み物ばかりを摂取していると、胃腸が内側から急激に冷やされてしまいます。すると、胃腸の血管が収縮して血行が悪くなり、消化機能が著しく低下します。消化不良を起こした食べ物が、いつまでも胃の中に留まることで、吐き気やむかつきの原因となるのです。さらに、汗を大量にかくことによる「水分とミネラルの不足」も、消化液の分泌を減少させ、消化不良を助長します。これらの要因が複雑に絡み合い、夏バテ特有の胃腸症状、特に吐き気を引き起こします。それは、過酷な夏を乗り切ろうとする体が発している、一種のSOSサインなのです。
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眼科医に聞く、ものもらい治療のよくある質問
ものもらい(麦粒腫・霰粒腫)は、誰もが経験しうる身近な病気だからこそ、多くの人が様々な疑問や不安を抱えています。ここでは、眼科の診察でよく尋ねられる質問とその答えをいくつかご紹介し、正しい知識を持っていただくための一助としたいと思います。まず、最も多い質問が「ものもらいは、人にうつりますか?」というものです。結論から言うと、通常の麦粒腫や霰粒腫は、他の人にうつる(伝染する)ことはありません。原因は、自分の皮膚や体内に普段からいる常在菌による感染や、腺の詰まりであり、はやり目(流行性角結膜炎)のように、ウイルスが原因で次々と人に感染していく病気とは全く性質が異なります。ですから、ものもらいになったからといって、学校や仕事を休む必要はありませんし、プールに入ることも基本的には問題ありません。ただし、汚れた手で患部を触り、その手で他の人の目に触れるようなことがあれば、細菌を運んでしまう可能性はゼロではないため、手洗いはしっかり行いましょう。次に、「自分で潰して膿を出しても良いですか?」という質問もよく受けます。これは、絶対にやってはいけません。不潔な手や器具で無理に潰そうとすると、細菌がさらに奥深くへ入り込んで炎症が悪化したり、周囲の正常な組織を傷つけてしまったりする危険性があります。最悪の場合、まぶた全体がひどく腫れ上がる「眼瞼蜂窩織炎」という重篤な状態になりかねません。膿が溜まって痛みが強い場合は、自己判断せず、必ず眼科を受診し、必要であれば清潔な環境で医師による切開排膿の処置を受けてください。また、「温めるのと冷やすの、どちらが良いですか?」という質問も多いです。これは、病気の種類や時期によって異なります。細菌感染による急性の炎症で、赤みや腫れ、痛みが強い「麦粒腫」の初期段階では、冷やすことで炎症を和らげ、楽になることがあります。一方、腺が詰まってしこりになっている「霰粒腫」や、麦粒腫で膿が固まってきている段階では、温めることで血行を促進し、詰まった脂や膿の排出を助ける効果が期待できます。ただし、判断が難しい場合も多いので、基本的には医師の指示に従うのが最も安全です。ものもらいは、軽視されがちですが、正しい知識を持って対処することが大切です。疑問や不安があれば、遠慮なく眼科医に質問してください。
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頭を打った後のCT検査、どんな時に必要?
頭をぶつけて病院を受診した際、医師が「CT検査を撮りましょう」と判断することがあります。CT検査(コンピュータ断層撮影)は、X線を使って、頭部を輪切りにしたような詳細な断層画像を撮影する検査で、頭蓋骨の内部の状態、特に脳の出血や損傷、骨折の有無を、短時間で正確に評価することができます。頭部外傷の診断において、非常に重要な役割を担う検査ですが、放射線による被ばくも伴うため、全てのケースで行われるわけではありません。医師は、どのような場合にCT検査が必要だと判断するのでしょうか。CT検査が強く推奨されるのは、まず「意識障害」がある場合です。呼びかけへの反応が鈍い、刺激を与えないと目を開けない、あるいは全く意識がないといった場合は、脳が圧迫されている可能性が極めて高く、その原因を特定するために、CT検査が必須となります。次に、「明らかな神経症状」が見られる場合も、検査の対象となります。片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、けいれん発作を起こした、といった症状は、脳の局所的な損傷を示唆しており、CTでその部位を確認する必要があります。また、頭蓋骨骨折が疑われる所見、例えば、頭部に明らかな陥没がある、耳や鼻から血液や透明な液体(髄液)が漏れ出している、目の周りにパンダのような痣ができる(パンダの目徴候)といった場合も、骨折の程度と、それに伴う脳への影響を評価するためにCT検査が行われます。さらに、先にも述べたように、「血液をサラサラにする薬を服用している」場合や、「アルコールを多量に摂取している」場合も、出血のリスクが高いため、比較的軽い打撲でも、念のためにCT検査を行うことが多くなります。たとえ意識がはっきりしていても、「受傷時の記憶がない(健忘)」場合や、65歳以上の高齢者であることも、検査を検討する理由となります。医師は、これらの危険因子や臨床症状を総合的に評価し、CT検査の必要性を判断します。患者さんやご家族は、なぜ検査が必要なのか、あるいはなぜ必要ないのか、医師の説明をよく聞き、納得した上で検査に臨むことが大切です。
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喉の痛み、RSウイルスの検査と診断
大人がRSウイルス感染症にかかった場合、その症状は一般的な風邪と似ているため、症状だけでは確定診断を下すことは困難です。しかし、近年では、RSウイルスの存在を迅速に確認するための検査キットが普及し、診断の補助として用いられるようになっています。医療機関では、どのようなプロセスで診断が行われるのでしょうか。まず、医師は「問診」と「診察」を丁寧に行います。いつから、どのような症状があるか、特に喉の痛みの程度や、咳、鼻水の性状などを詳しく聞き取ります。また、周囲(特に小さな子供)での流行状況や、家族の感染歴は、RSウイルスを疑う上で非常に重要な情報となります。診察では、喉の奥を視診し、赤みや腫れの程度、扁桃腺の状態などを確認します。これらの臨床所見から、医師がRSウイルス感染症を強く疑った場合に、補助診断として「迅速抗原検査」が行われることがあります。これは、インフルエンザの検査と同様に、細い綿棒を鼻の奥(鼻咽頭)に挿入して粘液を採取し、専用のキットを使って、その中にRSウイルスの成分(抗原)が含まれているかを調べる検査です。10〜15分程度で結果が判明するという、迅速さが最大のメリットです。ただし、この検査には注意点があります。RSウイルスの迅速抗原検査は、保険適用の対象となる患者さんが限定されているのです。現在、保険が適用されるのは、「1歳未満の乳児」「パリビズマブ(シナジス)の適応となる患者(早産児や特定の心疾患・肺疾患を持つ乳幼児など)」、そして「入院中の患者」のみです。したがって、健康な大人が外来で受診した際に、この検査を保険診療で行うことは、原則としてできません。そのため、大人のRSウイルス感染症の診断は、多くの場合、検査を行わず、流行状況や臨床症状から「臨床診断」として下されることになります。検査ができないからといって、治療ができないわけではありません。RSウイルスには特効薬がなく、治療は対症療法が中心となるため、診断が確定しても治療方針が大きく変わるわけではないからです。医師は、あなたのつらい症状を和らげることを最優先に、最適な治療法を提案してくれます。
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喉のイガイガと咳、後鼻漏が原因かも
咳が一か月以上も続いている。特に、横になると咳き込んだり、日中も頻繁に喉の奥がイガイガして、咳払いを繰り返してしまったりする。このような症状の場合、その咳の原因は、肺や気管支ではなく、「鼻」や「喉」にあるのかもしれません。その代表的な原因が、「後鼻漏(こうびろう)」です。後鼻漏とは、鼻水が、鼻の前から流れ出るのではなく、喉の奥の方へと流れ落ちてしまう状態のことを指します。通常、鼻の中では、吸い込んだ空気を加湿・浄化するために、常に一定量の粘液(鼻水)が作られています。この鼻水は、無意識のうちに喉へと流れ、飲み込まれています。しかし、何らかの原因で鼻水の量が増えたり、粘り気が強くなったりすると、この流れ落ちる鼻水を、喉の異物として敏感に感じ取るようになります。そして、この喉に垂れ込んでくる鼻水や、それが刺激となって生じる痰を、体外に出そうとする防御反応として、「咳」や「咳払い」が起こるのです。後鼻漏による咳は、特に仰向けに寝ると、鼻水が重力で喉に溜まりやすくなるため、就寝中や起床時に悪化しやすいという特徴があります。日中も、常に喉に何かが張り付いているような不快感や、痰が絡む感じが続くため、頻繁な咳払いが癖になってしまうこともあります。この後鼻漏を引き起こす背景には、いくつかの病気が隠れています。最も多いのが、「アレルギー性鼻炎」や「花粉症」です。アレルゲンによって過剰に作られたサラサラの鼻水が、喉に流れ込みます。また、細菌やウイルス感染が原因で、鼻の奥にある副鼻腔という空洞に膿が溜まってしまう「副鼻腔炎(蓄膿症)」も、後鼻漏の大きな原因となります。この場合、粘り気の強い、黄色や緑色がかった鼻水や痰が特徴です。このような症状に心当たりがある場合、相談すべき診療科は「耳鼻咽喉科」です。耳鼻咽喉科では、鼻や喉の状態を直接観察し、アレルギー検査やレントゲン検査などを行うことで、後鼻漏の原因となっている病気を特定します。そして、抗アレルギー薬や点鼻薬、あるいは抗菌薬といった、根本原因に対する治療を行うことで、しつこい咳の症状を改善へと導いてくれるのです。
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頭をぶつけた時、何科へ行くべき?
日常生活の中で、ドアの角に頭をぶつけたり、転んで地面に頭を打ち付けたりと、思わぬアクシデントで頭を強打してしまうことは誰にでも起こり得ます。その瞬間は痛くても、たんこぶができただけで、特に変わった様子がなければ「大丈夫だろう」と自己判断してしまいがちです。しかし、頭部の打撲は、外見からは分からない頭蓋骨の内部で、深刻な事態を引き起こしている可能性もゼロではありません。いざ、病院へ行こうと考えた時、多くの人が「何科を受診すれば良いのか」と迷うことでしょう。このような頭部打撲(頭部外傷)を専門的に診療する中心的な科は、「脳神経外科」です。脳神経外科は、脳や脊髄、末梢神経の病気のうち、主に手術による治療が必要な疾患を専門とするエキスパートです。頭をぶつけた際に最も怖いのは、頭蓋骨の内部で出血が起こる「頭蓋内出血」です。脳神経外科では、CTスキャンなどの画像検査を迅速に行い、脳に出血や損傷がないかを正確に診断します。もし、緊急手術が必要な血腫(血の塊)が見つかった場合には、そのまま速やかに対応することが可能です。では、脳神経外科が近くにない場合はどうすれば良いでしょうか。その場合は、「外科」や「整形外科」でも初期対応は可能です。これらの科でも、頭部のレントゲン検査や、状態によってはCT検査の依頼などを行い、骨折の有無や明らかな出血がないかを確認してくれます。そして、専門的な治療が必要と判断されれば、速やかに脳神経外科のある病院へ紹介してくれます。また、小さな子供が頭をぶつけた場合は、まずかかりつけの「小児科」に相談するのも良いでしょう。小児科医は、子供の頭部外傷に特有の症状や注意点を熟知しており、専門医の診察が必要かどうかを的確に判断してくれます。大切なのは、自己判断で様子を見過ぎないことです。特に、意識の状態がおかしい、嘔吐を繰り返すといった危険なサインがある場合は、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。
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私の子供のヘルパンギーナ体験記、舌の痛みとの闘い
去年の夏、当時3歳だった娘がヘルパンギーナにかかりました。それは、週末の朝、突然始まりました。「ママ、なんだか体が熱い」。そう言ってぐったりしている娘の熱を測ると、39.5度。慌てて休日診療の小児科へ駆け込みました。診察室で口の中を見てもらうと、医師は「ああ、喉の奥にいっぱいブツブツができていますね。ヘルパンギーナです」と告げました。その時は、高熱が一番の心配で、解熱剤をもらって帰宅しました。しかし、本当の闘いはそこからでした。熱は解熱剤で一時的に下がるものの、娘はひどく機嫌が悪く、一日中泣き続けていました。そして、大好きだったゼリーを口にしても、一口で顔をしかめて泣き出し、何も受け付けなくなってしまったのです。不思議に思って口の中を覗いてみると、喉の奥だけでなく、舌の先や縁にも、赤くて小さな口内炎がいくつもできているのを発見しました。これが、娘の機嫌の悪さと食欲不振の本当の原因だったのです。舌は、少し動かすだけでも痛むのでしょう。話すことさえ辛そうで、ただただ泣きじゃくるばかり。水分だけでも摂らせようと、麦茶やイオン飲料をスプーンで口に運びましたが、それさえも「痛い!」と拒絶されてしまいました。脱水症状が心配で、私は途方に暮れました。何か口にできるものはないか。そう思い、私が試したのは、バニラアイスクリームでした。冷たい感覚が痛みを麻痺させてくれるかもしれない、という淡い期待を込めて、スプーンの先にほんの少しだけつけて、そっと娘の口に運びました。すると、娘は一瞬顔をしかめましたが、泣き止んで、こくんと飲み込んだのです。そして、小さな声で「もうちょっと」。その一言が、私にとっては暗闇の中の一筋の光のように感じられました。その日から数日間、娘の主食はアイスクリームと、凍らせたイオン飲料を少しずつ舐めさせることでした。栄養面での心配はありましたが、まずは脱水を防ぐことが最優先。舌の痛みがピークだった2日間をそうして乗り切り、3日目あたりから、少しずつ冷たいお粥や豆腐などを口にできるようになりました。子供の病気は、親の知識と工夫、そして何よりも根気が試されるのだと、身をもって学んだ数日間でした。
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恥ずかしさを乗り越えて婦人科で相談するのはありか
血便というデリケートな問題に直面した女性が、専門である消化器内科や肛門科の受診をためらってしまう一番の理由は、やはり「羞恥心」でしょう。特にお尻の診察には強い抵抗を感じる方が多く、それが受診を遅らせる大きな障壁となっています。そんな時、「婦人科なら、女性特有の悩みに慣れているし、医師も女性が多いから相談しやすいかもしれない」と考える方もいるかもしれません。では、血便の相談を、まず婦人科にするのは果たして「あり」なのでしょうか。結論から言うと、限定的な状況を除いては、最適な選択とは言えません。婦人科は、子宮、卵巣、膣といった女性生殖器の専門家であり、消化管や肛門の病気を診断・治療するための専門的な知識や設備(内視鏡など)は備えていません。血便の原因が痔や大腸の病気である場合、婦人科では正確な診断を下すことはできず、結局は消化器内科や肛門科を紹介されることになります。つまり、遠回りになってしまう可能性が高いのです。ただし、いくつかの例外的なケースでは、婦人科への相談が有効な場合があります。例えば、血便だと思っていた出血が、実は生理の経血や、子宮頸がん・子宮体がんなどによる「不正性器出血」であった、という可能性です。特に、排便のタイミングと関係なく下着に出血が付着する場合や、性交後に出血がある場合などは、婦人科系の病気が疑われます。また、重い「子宮内膜症」が、腸の壁にまで及んでいる場合(腸管子宮内膜症)、月経周期と連動して腹痛や血便が現れることがあります。このような、月経との関連性が強く疑われる症状の場合は、婦人科への相談が的確です。しかし、これらのケースは比較的稀であり、ほとんどの血便は消化管由来です。羞恥心を乗り越えるための工夫として、最初から「女性医師が在籍する消化器内科・肛門科」を探して受診するという方法があります。最近では、ウェブサイトで担当医の性別を公開しているクリニックも増えています。また、診察時にはタオルで体を覆ってくれるなど、プライバシーへの配慮を徹底している医療機関も多くあります。遠回りをして診断を遅らせるよりも、少しの勇気を出して、最初から適切な専門科の扉を叩くことが、心と体の健康を守るための最も賢明な選択と言えるでしょう。
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大人のRSウイルス、喉の激痛はそのサインかも
RSウイルス感染症と聞くと、多くの人が「乳幼児がかかる、重い呼吸器の病気」というイメージを持つかもしれません。確かに、RSウイルスは、特に生後数ヶ月の赤ちゃんが感染すると、細気管支炎や肺炎を引き起こし、重症化しやすいことで知られています。しかし、このウイルスは、決して子供だけの病気ではありません。大人も感染し、時にはつらい症状に悩まされることがあるのです。大人がRSウイルスに感染した場合、その症状は一般的な風邪と非常によく似ています。鼻水、鼻づまり、咳、発熱といった、いわゆる「かぜ症候群」の症状が現れるのが一般的です。しかし、その中でも、多くの大人が「特に辛かった」と訴える症状の一つが、「喉の強い痛み」です。風邪の時にも喉の痛みはよく経験しますが、大人のRSウイルス感染症では、その痛みが尋常ではないレベルに達することがあります。「唾を飲み込むのも激痛」「カッターナイフで喉を切り裂かれるような痛み」「喉が焼けるように痛い」などと表現されるほどの、激しい咽頭痛に見舞われることがあるのです。この強い痛みのため、食事や水分を摂ることさえ困難になり、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。なぜ、大人が感染すると、これほどまでに喉の痛みが強くなるのでしょうか。その一因として、大人の成熟した免疫システムが、ウイルスに対して過剰に反応し、喉の粘膜で強い炎症を引き起こしてしまうためではないかと考えられています。子供の頃にRSウイルスに何度も感染している大人は、ウイルスに対する免疫をある程度持っています。そのため、ウイルスが肺の奥深くまで侵入して重い肺炎になることは稀ですが、その代わりに、ウイルスの侵入口である上気道、特に喉(咽頭)で激しい局所的な炎症が起こりやすいのです。もし、普通の風邪だと思っていたのに、喉に経験したことのないような激しい痛みが現れた場合、それはRSウイルス感染症のサインかもしれません。