呼吸器疾患の最前線で多くの患者を診察してきた専門医に、近年増加傾向にある「咳と熱が続く」という訴えの正体について話を伺いました。先生によれば、現代社会特有の環境変化やライフスタイルが、症状の長期化に拍車をかけていると言います。まず先生が指摘したのは、マイコプラズマ肺炎の変容です。「かつては子供の病気というイメージが強かったマイコプラズマですが、最近では大人の重症例が目立ちます。特に特徴的なのは、熱が一度下がったように見えても、咳だけが激化し、数日後に再び高熱が出る二峰性のパターンです」と先生は語ります。このような場合、一般的な風邪薬では対応できず、マクロライド系やキノロン系といった特定の抗菌薬が必要になります。次に、先生は「咳喘息」と「感染症」の合併についても言及されました。「風邪のウイルス感染をきっかけに気道の過敏性が高まり、そこへ細菌が二次感染することで、咳と微熱がダラダラと続く状態に陥る人が多いのです。これは単なる炎症ではなく、気道の防衛システムがパニックを起こしている状態と言えます」との解説がありました。特に注意すべきレッドフラッグとして、先生は三つのポイントを挙げられました。第一に、一週間以上続く三十七度五分以上の熱。第二に、階段の上り下りでの息切れ。第三に、ヒューヒューという喘鳴です。これらが見られる場合は、肺胞レベルでの炎症が進んでいる可能性が高く、即座の画像診断が求められます。また、最近の傾向として、長引く咳の原因に「逆流性食道炎」が隠れているケースも増えているそうです。「胃酸が喉を刺激することで咳が出続け、それがストレスとなって自律神経を乱し、結果として体温調節機能に影響を与えて微熱のような感覚を生むことがあります」という意外な視点も示されました。先生からの最後のアドバイスは、受診の際の「情報の整理」についてでした。「いつから始まったかという点と同じくらい、どのような時に咳が止まらなくなるかという環境要因が重要です。職場の空調、ペットの有無、就寝時の姿勢など、些細なことが診断の決め手になります」とのこと。専門医の視点から見れば、咳と熱が続くという現象は、単なる不運な病気ではなく、体全体のバランスの崩れを知らせる高度な警告メッセージなのです。科学的なアプローチでそのパズルを解き明かすためには、患者と医師が正確な情報を共有する共同作業が欠かせないということを、先生の言葉は強く物語っていました。
長引く咳と熱の正体を探る呼吸器専門医への特別インタビュー記録