冬から春先にかけて、子供たちの間で流行する感染性胃腸炎。その代表的な原因の一つが「ロタウイルス」です。特に、生後六ヶ月から二歳頃の乳幼児が初めて感染すると、非常に激しい症状に見舞われることがあり、親としてはその経過を正しく理解しておくことが大切です。ロタウイルス感染症の症状は、多くの場合、非常に突然に始まります。潜伏期間は一両日ほどで、最初のサインは、前触れもなく噴水のように何度も繰り返す「嘔吐」です。食べたものや飲んだものをすべて吐いてしまい、子供はぐったりとしてしまいます。この激しい嘔吐とほぼ同時に、あるいは少し遅れて、三十八度以上の「高熱」が出ることが多く、体力の消耗はさらに激しくなります。そして、発症から一日か二日経つと、嘔吐は少しずつ落ち着いてくる代わりに、今度は下痢の症状が始まります。この下痢が、ロタウイルスの最大の特徴です。一日に十回以上にも及ぶ、水のようにサラサラとした「水様便」が続きます。そして、この下痢便の色が、他の胃腸炎とは異なる、特徴的な変化を見せるのです。最初は黄色っぽい便ですが、次第に白っぽいクリーム色や、薄い黄色に変わっていきます。この状態は、しばしば「米のとぎ汁のような便」と表現され、ロタウイルス感染症を強く疑う重要なサインとなります。この特徴的な症状は、ウイルスが腸の粘膜にダメージを与え、消化吸収能力が著しく低下するとともに、胆汁の分泌が一時的に悪くなることで起こると考えられています。嘔吐、高熱、そして白い水様便。この三つの典型的な症状を知っておくことで、親は子供の異変に早期に気づき、適切な対応をとることができます。