いつも明るかったパートナーが、最近口数が少なく、笑顔も消えた。休日は一日中、部屋に閉じこもっている。食事もあまり摂らず、夜も眠れていないようだ。そんな大切な人の変化に気づいた時、「もしかしたら、うつ病かもしれない」と、心配と不安に駆られるのは当然のことです。しかし、最も難しいのが、本人にどう声をかけ、どうやって病院での受診に繋げるか、という問題です。デリケートな心の問題だからこそ、慎重で、愛情のこもったアプローチが求められます。まず、絶対にやってはいけないのが、「頑張れ」という言葉で励ますことです。うつ病の人は、すでに自分を責め、これ以上ないほど頑張ろうとして、エネルギーが尽きてしまっている状態です。そんな人に「頑張れ」と言うのは、「骨折している人に、もっと速く走れ」と言うようなもので、本人をさらに追い詰めてしまいます。また、「気の持ちようだ」「甘えるな」といった、精神論で片付けるのも厳禁です。うつ病は、性格の問題ではなく、脳の機能不全という、治療が必要な「病気」なのです。では、どうすれば良いのでしょうか。大切なのは、「非難せず、共感し、心配している気持ちを伝える」ことです。「最近、元気がないように見えて、とても心配しているよ」「よく眠れていないみたいだけど、何か辛いことがあるの?」というように、あなたの視点から見た客観的な事実と、心配しているという気持ちを、穏やかに伝えてみましょう。そして、本人が少しでも心を開いてくれたら、その話をじっくりと、途中で遮らずに聞いてあげてください。アドバイスをしたり、解決策を提示したりする必要はありません。ただ、共感的に耳を傾け、「一人じゃないよ」というメッセージを伝えることが、本人の孤立感を和らげます。受診を勧める際も、「病気かどうか、専門家の意見を聞いてみない?」というように、あくまで提案の形で切り出しましょう。「一緒に行くから」と付き添いを申し出ることも、本人の安心に繋がります。すぐに受診を拒否されるかもしれません。しかし、焦らず、根気強く、そして何よりも、あなたが常に味方であることを伝え続けること。それが、固く閉ざされた心の扉を開き、専門的な助けへと繋ぐための、最も大切な鍵となるのです。
家族がうつ病かも?本人を病院へ繋ぐために