子供がロタウイルスに感染した際、多くの親御さんを驚かせ、不安にさせるのが、おむつを開けた時に目にする「白っぽい便」です。普段見慣れている黄色や茶色の便とは全く違うその色に、「何か大変なことが起きているのでは」と心配になるのも当然のことでしょう。この特徴的な便の色の変化は、ロタウイルスが体の中でどのように作用しているかを理解すると、その謎が解けてきます。私たちの便の色は、主に肝臓で作られる「胆汁」という消化液に含まれる、ビリルビンという色素によって黄色や茶色に着色されています。胆汁は、食べ物に含まれる脂肪の消化吸収を助ける重要な役割を担っています。しかし、ロタウイルスは、小腸の粘膜に感染し、そこで激しい炎症を引き起こします。この炎症によって、腸の粘膜細胞は大きなダメージを受け、食べ物から栄養を消化吸収する能力が著しく低下してしまいます。この時、胆汁を腸へ分泌する機能も一時的に障害されたり、あるいは腸内環境の急激な変化によって胆汁がうまく機能しなくなったりすると考えられています。その結果、便を色づけるはずの胆汁の色素が便に混ざらなくなり、便は本来の色を失って、白っぽいクリーム色や、米のとぎ汁のような色になるのです。また、ロタウイルスによる下痢は、腸の消化吸収機能が極端に低下しているため、飲んだミルクなどが十分に消化されないまま排出されてしまうことも、便が白っぽく見える一因とされています。この白い便は、通常、下痢のピークである発症三日目から五日目頃によく見られ、腸の機能が回復してくるにつれて、徐々に元の黄色っぽい便へと戻っていきます。一時的なものであれば、過度に心配する必要はありません。しかし、もし、発熱や下痢といった他の症状がなく、常に白い便が出続ける場合は、胆道閉鎖症など、別の重篤な病気の可能性も考えられるため、速やかに小児科を受診する必要があります。
ロタウイルスの便はなぜ白くなるのか