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私が喉の痛みで耳鼻咽喉科を選んだ話
それは、季節の変わり目の、よくある風邪から始まりました。最初は、軽い喉のイガイガと鼻水。市販の風邪薬を飲んでいれば、二、三日で治るだろうと高をくくっていました。しかし、その予想は大きく外れました。熱や鼻水は治まったものの、喉の痛みだけが、日に日に悪化していったのです。四日目の朝、私はベッドの上で、自分の喉に起きた異変に気づきました。唾を飲み込むたびに、まるでガラスの破片でも飲み込んでいるかのような、鋭い痛みが走るのです。痛みで、朝食のパンを飲み込むこともできません。声も、まるで別人のようにガラガラにかすれていました。これは、ただの風邪のなごりではない。そう直感した私は、内科ではなく、喉の専門家である耳鼻咽喉科へ行くことを決意しました。クリニックの待合室で待っている間も、唾を飲み込むのが怖くて、口の中に溜まった唾をティッシュに出すほどでした。診察室に呼ばれ、恐る恐る口を開けると、医師は「ああ、これはひどいね」と一言。そして、鼻から細いカメラ(ファイバースコープ)を入れ、喉の奥の状態をモニターに映し出してくれました。そこに映っていたのは、真っ赤に腫れ上がり、白い膿が点々と付着した、痛々しい私の扁桃腺でした。診断は「急性扁桃炎」。原因は細菌感染だろうとのことでした。その場で、喉に直接、殺菌薬を塗ってもらい、抗生物質と痛み止めを処方されました。そして、霧状の薬を吸入するネブライザー治療も受けました。クリニックを出る頃には、あれほどひどかった痛みが、少しだけ和らいでいるのを感じました。その日の夜から抗生物質を飲み始めると、翌朝には、痛みが劇的に軽くなっていることに驚きました。三日も経つ頃には、普通に食事ができるようになり、一週間後には、すっかり元の声を取り戻すことができました。あの時、自己判断で我慢し続けず、耳鼻咽喉科という専門の扉を叩いて、本当に良かったと思います。たかが喉の痛みと侮ることが、いかに危険かを、私はこの経験から学びました。
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ものもらい、自分で治せる?家庭での正しいケア
まぶたが少し赤い、軽い痛みがある。ものもらいになりかけの時、「病院へ行くほどでもないかな」「自分で何とか治せないだろうか」と考える方もいるでしょう。ごく初期の軽い症状であれば、家庭での適切なセルフケアによって、悪化させずに治癒へと導くことができる場合もあります。しかし、その方法を間違えると、かえって症状を悪化させてしまう危険性もあるため、正しい知識を持っておくことが重要です。まず、家庭でできる最も大切なケアは、「まぶたを清潔に保ち、触らない」ことです。ものもらいの原因は細菌感染です。汚れた手でまぶたをこすったり、触ったりすることは、さらに細菌を繁殖させ、炎症を悪化させる原因となります。かゆみや異物感があっても、絶対に触らないように意識しましょう。次に、体の抵抗力を高め、回復を助けるために、「十分な休息と栄養」を心がけることです。ものもらいは、疲れやストレスで免疫力が低下している時にできやすい病気です。睡眠時間をしっかりと確保し、リラックスして過ごすようにしましょう。バランスの取れた食事を摂ることも、体の回復力をサポートします。特に女性の場合、症状が出ている間は「アイメイクを控える」ことが鉄則です。アイシャドウやアイライナー、マスカラなどが、感染した分泌腺を塞いだり、刺激を与えたりして、症状を悪化させる可能性があります。また、コンタクトレンズの使用も、症状が治まるまでは中止し、メガネで過ごすようにしましょう。レンズが細菌の温床となったり、まぶたへの刺激となったりするからです。市販の抗菌目薬を使用するという選択肢もありますが、薬局の薬剤師に相談し、ものもらい(麦粒腫)に適したものであることを確認してから使用してください。ただし、これらのセルフケアを行っても、2〜3日経っても症状が改善しない、あるいは痛みや腫れがひどくなる、膿が出てきたといった場合は、迷わず「眼科」を受診してください。自己判断で放置すると、炎症が周囲に広がったり、しこりが残ったりする可能性があります。家庭でのケアは、あくまで初期対応と割り切り、症状の悪化が見られたら、速やかに専門医の診断を仰ぐことが、最も安全で確実な治癒への道です。
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私の夏バテ体験談、吐き気とだるさとの闘い
去年の夏、私は人生で初めて、本格的な夏バテというものを経験しました。それは、7月の終わり、連日35度を超える猛暑日が続いていた頃のことです。最初は、なんとなく食欲がないな、という程度の軽い不調でした。しかし、8月に入る頃には、その症状は明らかに悪化していました。朝起きても、全身が鉛のように重く、会社へ行く気力が湧きません。昼食も、おにぎり一つを食べるのがやっとで、午後は決まって、胃がムカムカするような、乗り物酔いに似た不快な吐き気に見舞われるようになりました。特に辛かったのが、冷房の効いたオフィスから、一歩外へ出た瞬間の、あの熱風です。その温度差に、体が悲鳴を上げているのが分かりました。頭がクラクラし、立っているのもやっとの状態。食欲不振と吐き気が続くことで、体力はどんどん奪われていきました。好きだったビールも全く美味しいと感じられず、夜も寝苦しさから何度も目が覚めてしまい、悪循環に陥っていました。このままではいけない。そう思った私は、まず自分の生活を見直すことから始めました。暑いからといってシャワーだけで済ませていたのを、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるように変えました。これにより、自律神経が整えられ、夜の寝つきが少し良くなった気がします。食事も、無理に食べようとせず、まずは梅干しを入れたおかゆや、冷たい茶碗蒸しなど、喉を通りやすいものから始めました。また、意識してこまめにスポーツドリンクを飲むようにし、汗で失われた水分とミネラルを補給することを心がけました。劇的な変化ではありませんでしたが、こうした地道なセルフケアを1週間ほど続けると、あれほどしつこかった吐き気が、少しずつ和らいでいくのが分かりました。そして、少し食欲が出てきた時に食べた、きゅうりとミョウガの酢の物が、驚くほど美味しく感じられたのです。あの時の、体の細胞に染み渡るような感覚は、今でも忘れられません。この経験を通じて、夏バテを甘く見てはいけないこと、そして、日々の小さな養生がいかに大切かを、身をもって学びました。
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まさか私がRSウイルス?喉の痛みとの闘い
先月のこと、私は人生で経験したことのないほどの、喉の痛みに見舞われました。始まりは、保育園に通う4歳の息子が、高熱とひどい咳でRSウイルス感染症と診断されたことでした。息子の看病に追われる中、私自身もなんだか喉がイガイガし始め、「ああ、風邪がうつったな」と軽く考えていました。しかし、その翌日、事態は急変しました。朝、目覚めると、喉にガラスの破片が突き刺さっているかのような、激しい痛みが走ったのです。唾を飲み込むことさえ、ためらわれるほどの激痛。鏡で喉の奥を見ると、扁桃腺のあたりが真っ赤に腫れ上がっていました。熱も38度を超え、体中の関節がギシギシと痛みます。これはただの風邪ではない。そう直感した私は、かかりつけの内科へ駆け込みました。事情を話すと、医師は「おそらく、お子さんからRSウイルスがうつったのでしょう。大人がかかると、喉の痛みがひどく出ることが多いんですよ」と説明してくれました。特効薬はないため、解熱鎮痛薬と、炎症を抑えるトローチを処方され、とにかく水分を摂って安静にするように言われました。しかし、その日からが本当の地獄でした。処方された鎮痛薬を飲んでも、喉の痛みはほとんど和らぎません。食べ物は一切喉を通らず、水分を摂るのも一苦労。ゼリーやヨーグルトですら、喉にしみて激痛が走ります。唯一、口にできたのは、なぜかバニラアイスクリームだけでした。冷たさが痛みを麻痺させてくれるのか、それだけは少量ずつ食べることができました。数日間、私の食事はアイスクリームだけ。夜も、喉の痛みと咳でほとんど眠れず、体力はどんどん奪われていきました。子供の病気と侮っていたことを、心から後悔しました。結局、喉の痛みのピークは3〜4日ほど続き、1週間ほど経って、ようやく普通に食事が摂れるようになりました。この経験を通じて、RSウイルスが大人の健康にとっても、決して軽視できない脅威であることを身をもって知りました。そして、子供の看病をする際は、自分自身の感染対策がいかに重要かを痛感した出来事でした。
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ものもらい治療中のコンタクトとメイク
ものもらい(麦粒腫)や霰粒腫になってしまった時、特に女性にとって気になるのが、「コンタクトレンズはいつまで使えないのか」「アイメイクはいつから再開できるのか」という問題でしょう。おしゃれや身だしなみの一部として、これらが欠かせないという方も多いと思いますが、症状を悪化させず、スムーズに治癒させるためには、治療中のコンタクトレンズとアイメイクには、正しい知識に基づいた注意が必要です。まず、「コンタクトレンズ」についてです。結論から言うと、まぶたに炎症や腫れ、痛みといった症状がある間は、コンタクトレンズの使用は絶対に中止しなければなりません。その理由はいくつかあります。第一に、コンタクトレンズ自体が、細菌の温床となる可能性があるからです。レンズの表面に細菌が付着し、それがまぶたの炎症をさらに悪化させるリスクがあります。第二に、レンズを装用することで、まぶたへの物理的な刺激となり、治癒を妨げてしまうからです。また、治療に用いる点眼薬の中には、コンタクトレンズを装用したままでは使用できないものや、レンズを変色させてしまう成分が含まれているものもあります。症状が完全に治まり、医師から許可が出るまでは、必ずメガネで過ごすようにしてください。次に、「アイメイク」についてです。こちらも、コンタクトレンズと同様に、症状がある間は完全に控えるのが原則です。アイシャドウやアイライナー、マスカラといった化粧品の粒子が、感染している分泌腺に入り込んだり、マイボーム腺の出口を塞いだりして、炎症を悪化させる原因となります。また、メイクを落とす際のクレンジングで、まぶたをこすることも、大きな負担となります。治療中は、アイメイク以外のメイクで工夫し、目元は清潔な状態を保つことに専念しましょう。では、いつから再開できるのでしょうか。これは、症状の回復具合によるため、一概には言えませんが、少なくとも、まぶたの赤みや腫れ、痛み、しこりといった症状が完全に消失してから、というのが一つの目安です。しかし、最も確実なのは、再診時に医師に確認し、その許可を得てから再開することです。焦って中途半端な状態で再開すると、症状がぶり返してしまう可能性もあります。つらい症状を一日でも早く治すために、治療中は少しだけ目元のオシャレを我慢することが、結局は一番の近道となるのです。
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ヘルパンギーナで舌が痛い時の食事
ヘルパンギーナの最もつらい症状は、高熱と、喉や舌にできた水ぶくれや口内炎による強い痛みです。この痛みは、食事や水分を摂ることを困難にし、特に小さな子供では、脱水症状を引き起こす危険性があるため、家庭でのケアが非常に重要になります。では、舌が痛くて食事が進まない時、どのようなものを選び、どうやって与えれば良いのでしょうか。まず、大原則は「喉ごしが良く、しみないもの」を選ぶことです。熱いもの、酸っぱいもの、味の濃いもの、塩辛いものは、口内炎にしみて激しい痛みを引き起こすため、絶対に避けなければなりません。オレンジジュースなどの柑橘系のジュースや、トマトソースを使った料理、醤油味の強いものなどはNGです。また、おせんべいやクッキー、パンの耳といった硬い食べ物も、口の中を傷つけてしまうため避けましょう。おすすめは、人肌程度に冷ました、柔らかくてつるんとした食感のものです。例えば、冷たいお粥や、よく煮込んで冷ましたうどん、豆腐、茶碗蒸し、かぼちゃやじゃがいものポタージュスープなどが挙げられます。プリンやゼリー、ヨーグルト、バニラアイスクリームなども、冷たくて喉ごしが良いため、子供が喜んで食べてくれることが多いでしょう。これらは栄養価も高く、エネルギー補給にもなります。食事の形態も工夫が必要です。食べ物はできるだけ細かく刻んだり、ミキサーにかけたりして、噛まずに飲み込めるような状態にしてあげると、痛みが和らぎます。食事以上に大切なのが、「水分補給」です。脱水を防ぐために、こまめな水分摂取を心がけましょう。ただし、ここでも酸味の強いジュースは避けます。麦茶や湯冷まし、あるいは子供用のイオン飲料(経口補水液)などが最適です。一度にたくさん飲ませようとせず、スプーンやストローを使って、少量ずつ、根気よく与えることがポイントです。ヘルパンギーナの時の食事は、栄養を摂ることよりも、まず「脱水を防ぐこと」「痛みを最小限に抑えること」を最優先に考えます。数日間、食事が十分に摂れなくても、水分さえしっかり補給できていれば、大きな問題はありません。焦らず、子供が口にできるものを探しながら、つらい時期を乗り越えていきましょう。
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夏バテの吐き気に効くツボとセルフケア
夏の暑さで胃腸が弱り、吐き気やむかつきを感じる時、薬に頼る前に、自分でできる簡単なセルフケアを試してみるのも一つの手です。東洋医学には、体の特定のポイントを刺激することで、不調を和らげる「ツボ(経穴)」という考え方があります。吐き気に効果的とされるツボをいくつか知っておくと、外出先などで急に気分が悪くなった時にも、心強いお守りとなるでしょう。まず、最も有名で、押しやすいツボが「内関(ないかん)」です。これは、手首の内側のしわの中央から、指3本分ほど肘側へ向かったところにあります。腕にある2本の太い腱の間に位置します。乗り物酔いにも効くとされるこのツボを、反対側の親指の腹で、少し痛みを感じるくらいの強さで、ゆっくりと5秒ほど押しては離す、というのを数回繰り返してみてください。自律神経のバランスを整え、胃の不快感を和らげる効果が期待できます。次に、足にある「足三里(あしさんり)」も、胃腸の調子を整える万能のツボとして知られています。膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみから、指4本分ほど下がった、すねの骨の外側にあります。押すとズーンと響くような感じがする場所です。ここを、親指で心地よい強さで揉みほぐすように刺激します。胃腸のぜん動運動を活発にし、消化を助ける働きがあるとされています。これらのツボ押しと合わせて行いたいのが、腹式呼吸です。椅子に座るか、仰向けに寝て、全身の力を抜きます。おへその下に意識を集中し、鼻からゆっくりと息を吸い込みながら、お腹を大きく膨らませます。そして、吸う時よりも長い時間をかけて、口からゆっくりと息を吐き出しながら、お腹をへこませていきます。この腹式呼吸を数分間繰り返すことで、乱れがちな自律神経のバランスが整い、心身がリラックスして、吐き気が和らぐことがあります。また、ペパーミントやレモン、ジンジャーといった、爽やかな香りのアロマオイルをティッシュに1滴垂らし、その香りを嗅ぐのも、気分をリフレッシュさせ、むかつきを軽減させるのに役立ちます。これらのセルフケアは、あくまで症状を緩和するための一時的な対処法です。もし、吐き気が何日も続いたり、他の症状を伴ったりする場合は、必ず医療機関を受診してください。
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夏バテの吐き気を和らげる食事の工夫
夏の暑さで胃腸が弱り、吐き気やむかつきを感じる時、食事を摂ること自体が苦痛に感じられるかもしれません。しかし、何も食べずにいると、体力はますます低下し、夏バテからの回復が遅れてしまいます。こんな時こそ、胃腸に負担をかけず、効率よく栄養を補給するための「食事の工夫」が非常に重要になります。まず、大原則は「消化が良く、胃に優しいもの」を選ぶことです。脂肪分の多い揚げ物や、香辛料を多用した刺激の強い料理は、弱った胃腸にさらなる追い打ちをかけてしまうため、絶対に避けましょう。おすすめは、おかゆや雑炊、よく煮込んだうどん、冷奴、茶碗蒸しなどです。これらは、温かいものでも冷たいものでも、人肌程度の温度で食べるのがポイントです。熱すぎたり、冷たすぎたりするものは、胃腸への刺激となります。食欲がない時は、無理に固形物を摂ろうとせず、まずは栄養価の高いスープから試してみるのも良いでしょう。かぼちゃやじゃがいも、にんじんなどを煮込んでミキサーにかけた、冷製のポタージュスープなどは、ビタミンも補給できて一石二鳥です。また、胃酸の分泌を整え、消化を助ける効果が期待できる食材を、上手に取り入れるのも効果的です。例えば、大根おろしには消化酵素が豊富に含まれており、梅干しに含まれるクエン酸は、唾液や胃酸の分泌を促し、食欲を増進させてくれます。しそやミョウガ、ショウガといった香味野菜も、そのさわやかな香りで食欲を刺激し、胃腸の働きを整える効果が期待できます。食事の摂り方にも工夫が必要です。一度にたくさん食べようとせず、少量ずつ、何回かに分けて食べる「分食」を心がけましょう。これにより、胃腸への負担を軽減することができます。そして、何よりも大切なのが「水分補給」です。吐き気がある時は、脱水状態に陥りやすいため、こまめに水分を摂ることを忘れないでください。夏バテで吐き気がある時の食事は、「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も重要です。胃腸をいたわりながら、少しずつエネルギーを補給していくことが、つらい症状からの回復への近道となります。