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喉の激痛は耳鼻咽喉科が専門です
「ただの風邪だと思っていたら、日に日に喉の痛みが増してきて、唾を飲み込むことさえ激痛が走る」。こんな経験はありませんか。喉の痛みが日常生活に支障をきたすほど強くなった場合、それは単なる風邪の症状ではなく、喉そのものに強い炎症が起きているサインです。このような時、最も頼りになるのが、喉の専門家である「耳鼻咽喉科」です。内科でも喉の痛みの基本的な治療は受けられますが、耳鼻咽喉科には、専門科ならではの大きな強みがあります。それは、専門的な医療機器を用いて、喉の状態を「直接見て」診断し、治療できることです。診察室で、医師がライトで口の中を覗くだけでなく、鼻から細いカメラ(ファイバースコープ)を入れて、肉眼では見ることのできない喉の奥深く、声帯や喉頭の状態まで、リアルタイムで詳細に観察することができます。これにより、炎症がどのくらいの範囲で、どの程度ひどいのかを正確に把握し、急性扁桃炎なのか、急性咽頭炎なのか、あるいは声帯に異常があるのかといった、的確な診断を下すことが可能になります。診断がつけば、治療も専門的です。例えば、炎症を起こしている扁桃腺に、直接、炎症を抑える薬や殺菌薬を塗布する処置が行えます。これは、飲み薬だけよりも即効性が期待でき、つらい痛みを和らげるのに非常に効果的です。また、霧状にした薬剤を鼻や口から吸い込む「ネブライザー治療(吸入治療)」も、耳鼻咽喉科ならではの治療法です。薬剤が患部の粘膜に直接届くため、喉の腫れや痛みを効率的に鎮めることができます。さらに、声がかすれたり、出なくなったりした場合も、声帯の状態を直接観察できる耳鼻咽喉科でなければ、適切な診断と指導は困難です。喉の痛みは、我慢すればするほど悪化し、治療も長引く傾向にあります。特に、扁桃炎をこじらせてしまうと、扁桃周囲膿瘍といって、膿が溜まって口が開かなくなるような重篤な状態に至ることもあります。我慢できないほどの喉の激痛は、専門家の助けが必要だという体からのサインです。迷わず、耳鼻咽喉科の扉を叩いてください。
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うつ病を相談できる様々な窓口
うつ病かもしれないと感じた時、精神科や心療内科といった医療機関を受診するのが基本ですが、様々な理由から、すぐに病院へ行くことに抵抗を感じる方もいるでしょう。しかし、一人で悩みを抱え込む必要はありません。医療機関以外にも、あなたの心の悩みに耳を傾け、サポートしてくれる様々な相談窓口が存在します。まずは、そうした身近な窓口にアクセスしてみることから始めてみるのも、一つの大切なステップです。お住まいの地域には、必ず「保健所」や「精神保健福祉センター」といった、公的な相談機関があります。ここでは、保健師や精神保健福祉士といった専門のスタッフが、無料で心の健康に関する相談に応じてくれます。本人だけでなく、家族からの相談も受け付けており、必要であれば、地域の医療機関や支援サービスについての情報提供も行ってくれます。秘密は厳守されるので、安心して相談することができます。また、職場のストレスが原因である場合は、「会社の産業医やカウンセラー」に相談するという選択肢もあります。産業医は、従業員の心身の健康を守るための専門家であり、職場環境の調整などについても、会社側と連携して対応してくれることがあります。もちろん、相談内容のプライバシーは守られます。さらに、電話で気軽に相談できる窓口も数多く存在します。厚生労働省が支援する「こころの健康相談統一ダイヤル」や、NPO法人が運営する「いのちの電話」などは、匿名で、誰にも知られることなく、自分の気持ちを吐き出すことができる、大切なセーフティネットです。専門の相談員が、あなたの話にじっくりと耳を傾けてくれます。これらの相談窓口は、直接的な治療を行う場所ではありません。しかし、専門家と話すことで、自分の気持ちが整理されたり、客観的なアドバイスをもらえたり、あるいは、医療機関を受診する勇気が湧いてきたりと、次の一歩を踏み出すための大きなきっかけとなり得ます。一人で暗闇の中にいると感じた時、そこには必ず、あなたに手を差し伸べてくれる場所があるということを、どうか忘れないでください。
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ロタウイルスの便はなぜ白くなるのか
子供がロタウイルスに感染した際、多くの親御さんを驚かせ、不安にさせるのが、おむつを開けた時に目にする「白っぽい便」です。普段見慣れている黄色や茶色の便とは全く違うその色に、「何か大変なことが起きているのでは」と心配になるのも当然のことでしょう。この特徴的な便の色の変化は、ロタウイルスが体の中でどのように作用しているかを理解すると、その謎が解けてきます。私たちの便の色は、主に肝臓で作られる「胆汁」という消化液に含まれる、ビリルビンという色素によって黄色や茶色に着色されています。胆汁は、食べ物に含まれる脂肪の消化吸収を助ける重要な役割を担っています。しかし、ロタウイルスは、小腸の粘膜に感染し、そこで激しい炎症を引き起こします。この炎症によって、腸の粘膜細胞は大きなダメージを受け、食べ物から栄養を消化吸収する能力が著しく低下してしまいます。この時、胆汁を腸へ分泌する機能も一時的に障害されたり、あるいは腸内環境の急激な変化によって胆汁がうまく機能しなくなったりすると考えられています。その結果、便を色づけるはずの胆汁の色素が便に混ざらなくなり、便は本来の色を失って、白っぽいクリーム色や、米のとぎ汁のような色になるのです。また、ロタウイルスによる下痢は、腸の消化吸収機能が極端に低下しているため、飲んだミルクなどが十分に消化されないまま排出されてしまうことも、便が白っぽく見える一因とされています。この白い便は、通常、下痢のピークである発症三日目から五日目頃によく見られ、腸の機能が回復してくるにつれて、徐々に元の黄色っぽい便へと戻っていきます。一時的なものであれば、過度に心配する必要はありません。しかし、もし、発熱や下痢といった他の症状がなく、常に白い便が出続ける場合は、胆道閉鎖症など、別の重篤な病気の可能性も考えられるため、速やかに小児科を受診する必要があります。
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子供の喉の痛みは何科に連れて行く?
活発な子供が、急に「喉が痛い」と言って元気がなくなり、食事も摂れなくなってしまうと、親としては非常に心配になるものです。早く楽にしてあげたい一心で病院へ連れて行こうと思っても、「小児科と耳鼻咽喉科、どちらが良いのだろう?」と、受診先に迷うことがあるかもしれません。それぞれの科の特徴を理解し、子供の症状に合わせて選ぶことが大切です。まず、基本となるのは「小児科」です。小児科医は、子供の成長発達を理解し、全身を総合的に診る専門家です。子供の喉の痛みの多くは、風邪のウイルスや、溶連菌、アデノウイルスといった、全身に影響を及ぼす感染症の一部として現れます。特に、喉の痛みだけでなく、「高熱が出ている」「咳や鼻水がひどい」「体にも発疹が出ている」「ぐったりして元気がない」といった、全身症状が強い場合は、まず小児科を受診するのが最も安心です。小児科では、喉の状態だけでなく、胸の音や、お腹の調子、全身の皮膚の状態などをくまなく診察し、病気の全体像を把握した上で、適切な診断と治療を行ってくれます。溶連菌やアデノウイルスの迅速検査も、小児科で受けることができます。一方で、「耳鼻咽喉科」が適しているケースもあります。それは、全身症状はそれほどでもないのに、喉の局所的な症状が非常に強い場合です。例えば、「熱はないけれど、とにかく喉の痛みが激しくて、水分も摂れない」「声が全く出なくなってしまった」「喉の痛みと一緒に、耳も痛がっている」といった場合です。耳鼻咽喉科では、子供の小さな鼻や口からでも、細いファイバースコープを使って喉の奥を直接観察することができます。これにより、喉の腫れ具合を正確に把握したり、中耳炎を併発していないかを確認したりすることが可能です。また、痛みを和らげるための吸入治療(ネブライザー)など、専門的な処置も受けられます。選び方の目安としては、「全身症状が強いなら、まずは小児科」「喉や耳の局所症状が強いなら、耳鼻咽喉科」と考えると良いでしょう。もちろん、判断に迷う場合は、まずはかかりつけの小児科医に相談し、必要であれば耳鼻咽喉科を紹介してもらう、という流れが最も確実で安心な方法と言えます。
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家族がうつ病かも?本人を病院へ繋ぐために
いつも明るかったパートナーが、最近口数が少なく、笑顔も消えた。休日は一日中、部屋に閉じこもっている。食事もあまり摂らず、夜も眠れていないようだ。そんな大切な人の変化に気づいた時、「もしかしたら、うつ病かもしれない」と、心配と不安に駆られるのは当然のことです。しかし、最も難しいのが、本人にどう声をかけ、どうやって病院での受診に繋げるか、という問題です。デリケートな心の問題だからこそ、慎重で、愛情のこもったアプローチが求められます。まず、絶対にやってはいけないのが、「頑張れ」という言葉で励ますことです。うつ病の人は、すでに自分を責め、これ以上ないほど頑張ろうとして、エネルギーが尽きてしまっている状態です。そんな人に「頑張れ」と言うのは、「骨折している人に、もっと速く走れ」と言うようなもので、本人をさらに追い詰めてしまいます。また、「気の持ちようだ」「甘えるな」といった、精神論で片付けるのも厳禁です。うつ病は、性格の問題ではなく、脳の機能不全という、治療が必要な「病気」なのです。では、どうすれば良いのでしょうか。大切なのは、「非難せず、共感し、心配している気持ちを伝える」ことです。「最近、元気がないように見えて、とても心配しているよ」「よく眠れていないみたいだけど、何か辛いことがあるの?」というように、あなたの視点から見た客観的な事実と、心配しているという気持ちを、穏やかに伝えてみましょう。そして、本人が少しでも心を開いてくれたら、その話をじっくりと、途中で遮らずに聞いてあげてください。アドバイスをしたり、解決策を提示したりする必要はありません。ただ、共感的に耳を傾け、「一人じゃないよ」というメッセージを伝えることが、本人の孤立感を和らげます。受診を勧める際も、「病気かどうか、専門家の意見を聞いてみない?」というように、あくまで提案の形で切り出しましょう。「一緒に行くから」と付き添いを申し出ることも、本人の安心に繋がります。すぐに受診を拒否されるかもしれません。しかし、焦らず、根気強く、そして何よりも、あなたが常に味方であることを伝え続けること。それが、固く閉ざされた心の扉を開き、専門的な助けへと繋ぐための、最も大切な鍵となるのです。