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咳が止まらない!私が咳喘息と診断されるまで
3ヶ月前、私はひどい風邪をひきました。高熱と関節痛に数日間うなされ、ようやく回復したのですが、なぜか咳だけがすっきりと治まらずに残ってしまいました。最初は「風邪の治りかけだろう」と、あまり気にしていませんでした。しかし、その咳は、日を追うごとにひどくなっていきました。特に辛かったのが、夜、ベッドに入ってからです。体が温まると、喉の奥がムズムズし始め、一度咳が出ると、まるで嵐のように、息もできないほど激しく咳き込むのです。おかげで、毎晩のように寝不足が続きました。また、日中でも、電車の中の少しの温度差や、同僚の香水の匂い、電話で少し長く話しただけで、咳の発作が起きてしまうありさま。周りの視線も気になり、だんだんと会話をすることさえ億劫になっていきました。さすがにおかしいと思い、近所の内科クリニックへ行きましたが、「気管支炎でしょう」と診断され、一般的な咳止めと抗生物質を処方されただけ。しかし、それを飲んでも、私の咳は一向に良くなりませんでした。途方に暮れていた私を見かねて、会社の先輩が「呼吸器の専門の先生に診てもらった方がいいんじゃない?」とアドバイスをくれました。私は、その言葉に背中を押され、呼吸器内科を標榜する病院を予約しました。呼吸器内科の医師は、私の話を非常に丁寧に聞いてくれました。いつから、どんな時に、どのように咳が出るのか。そして、子供の頃にアレルギーがあったことなどを話すと、医師は「咳喘息の可能性が高いですね」と言いました。そして、診断を確定させるために、気管支を広げる薬を吸入する検査を行いました。すると、驚いたことに、吸入して数分後には、あれほど苦しかった喉の奥の違和感がスッと消え、呼吸が楽になったのです。「咳が楽になりましたね。これが咳喘息の証拠です」。医師のその言葉に、私はようやく、この長いトンネルの出口が見えたような気がしました。その日から、吸入ステロイド薬による治療が始まりました。毎日の吸入は少し面倒でしたが、治療を始めて1週間も経つ頃には、夜中の激しい咳はほとんどなくなり、ぐっすりと眠れるようになりました。あの時、専門医を訪ねる決心をして、本当に良かったと心から思います。
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たんこぶは大丈夫?頭をぶつけた後の応急処置
頭を強くぶつけると、打撲した部分の皮下で内出血が起こり、その血液やリンパ液が溜まって、ぷっくりとした「たんこぶ」ができます。見た目は痛々しいですが、たんこぶができること自体は、出血が頭蓋骨の外側にとどまっている証拠であり、多くの場合は大きな心配はいりません。しかし、適切な応急処置を行うことで、腫れや痛みを最小限に抑え、回復を早めることができます。頭をぶつけて、たんこぶができてしまった時の応急処置の基本は、「安静」と「冷却」です。まず、本人を落ち着かせ、椅子に座らせるか、頭を少し高くして横にさせるなど、楽な姿勢で安静にさせます。興奮して動き回ると、血行が良くなり、腫れがひどくなる可能性があります。次に、打撲した部分を冷やします。冷やすことで、血管が収縮し、内出血や炎症の広がりを抑える効果があります。清潔なタオルやガーゼで包んだ保冷剤や、ビニール袋に入れた氷水などを、たんこぶの部分に優しく当ててください。冷やしすぎると凍傷の危険があるため、1回あたり15〜20分程度を目安にし、少し時間を置いてから、また冷やすというのを繰り返すと良いでしょう。この冷却は、受傷後24〜48時間程度続けるのが効果的です。一方で、やってはいけないこともあります。それは、たんこぶを強く押したり、もんだりすることです。早く腫れを引かせようとしてマッサージをすると、かえって内出血を助長し、腫れを悪化させてしまいます。また、入浴についても、血行を促進させてしまうため、当日はシャワー程度で軽く済ませるのが無難です。たんこぶができている場合でも、前述したような危険な警告サイン(意識障害、繰り返す嘔吐、けいれんなど)がないかを、注意深く観察することが何よりも重要です。もし、これらの症状が見られた場合は、応急処置を中断し、直ちに医療機関を受診してください。また、たんこぶが非常に大きい、ブヨブヨしていて波動を感じる、あるいは時間が経っても全く小さくならない、といった場合も、一度、医師の診察を受けることをお勧めします。まれに、血腫が固まらずに残ってしまうこともあるためです。
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霰粒腫の手術、摘出術はどんな治療?
まぶたにできたしこり「霰粒腫」。点眼薬やステロイド注射といった保存的な治療を行っても、しこりが改善しない場合や、しこりが非常に大きくて見た目が気になる、あるいは角膜を圧迫して乱視の原因となっているような場合には、「霰粒腫摘出術」という手術が検討されます。これは、まぶたを切開して、原因となっているしこりの内容物と、それを包んでいる袋(嚢胞)ごと、きれいに取り除くという、最も確実な治療法です。手術と聞くと大げさに感じるかもしれませんが、通常は外来で、局所麻酔下で行うことができる、比較的短時間で済む処置です。手術は、眼科の処置室や手術室で行われます。まず、点眼麻酔をした後、まぶたの皮膚側と結膜側の両方に、注射による局所麻酔を行います。麻酔がしっかりと効けば、手術中に痛みを感じることはありません。医師は、しこりの位置や大きさに応じて、切開する場所を決定します。しこりが皮膚に近い場合はまぶたの皮膚側から、結膜に近い場合はまぶたを裏返して結膜側から切開します。皮膚側を切開した場合は、術後に縫合が必要となりますが、まぶたのシワに沿って切るため、傷跡はほとんど目立たなくなります。結膜側からの切開の場合は、縫合の必要はありません。切開を加えた後、医師は専用の器具を使って、しこりの内容物である粥状の脂と、再発の原因となる袋(嚢胞壁)を、丁寧にかき出します。この袋をきちんと取り除くことが、再発を防ぐ上で非常に重要です。手術にかかる時間は、しこりの大きさなどにもよりますが、おおよそ15〜30分程度です。術後は、感染予防のために抗菌薬の点眼や軟膏を使用し、数日間は眼帯を装着して過ごします。抜糸が必要な場合は、約1週間後に行います。霰粒腫摘出術は、しこりを根本的に取り除くことができるため、最も根治性の高い治療法と言えます。見た目の問題や、繰り返す炎症に悩まされている方にとっては、生活の質を大きく改善する有効な選択肢となります。不安な点があれば、事前に医師とよく相談し、納得した上で治療に臨むことが大切です。
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胸焼けと咳、逆流性食道炎の可能性
一か月以上も続く、頑固な咳。特に、食後や横になった時に咳き込んだり、胸焼けや、酸っぱいものが上がってくるような感覚(呑酸)を伴ったりする場合、その原因は呼吸器ではなく、「消化器」、具体的には「胃食道逆流症(GERD)」にある可能性を考える必要があります。胃食道逆流症とは、胃の中で食物を消化するために分泌される強力な酸である胃酸が、食道へと逆流してしまう病気です。通常、胃と食道の間は、筋肉(下部食道括約筋)によって固く閉じられていますが、加齢や食生活の乱れ、肥満などによってこの機能が弱まると、胃酸の逆流が起こりやすくなります。逆流した胃酸は、食道の粘膜を傷つけて炎症を起こし(逆流性食道炎)、胸焼けや胸の痛みを引き起こします。そして、この胃酸が、喉や気管の近くまで上がってくることで、咳のセンサーを直接刺激したり、あるいは、食道の神経を介して、反射的に咳を引き起こしたりするのです。これが、胃食道逆流症による慢性的な咳のメカニズムです。このタイプの咳には、いくつかの特徴があります。まず、食事の後、特に満腹になった時や、脂っこいものを食べた後に症状が悪化しやすいことです。また、体を前にかがめたり、横になったりすると、胃酸が逆流しやすくなるため、就寝中や夜間に咳き込んで目が覚めることもあります。声がかすれたり、喉に常に違和感があったりといった症状を伴うことも珍しくありません。呼吸器内科などで咳の治療をしても一向に改善しない場合、この胃食道逆流症が見逃されているケースは少なくありません。もし、あなたが長引く咳と共に、胸焼けや呑酸といった消化器症状を自覚しているのであれば、一度「消化器内科」や「胃腸科」を受診してみることを強くお勧めします。消化器内科では、問診や、場合によっては胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)によって診断を下します。そして、治療の基本となる、胃酸の分泌を強力に抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)を処方してくれます。この薬の服用によって、胃酸の逆流がコントロールされれば、あれほどしつこかった咳が、嘘のように改善することが期待できるのです。
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一か月以上続く咳、風邪ではないかも
風邪をひいた後、熱や鼻水は治まったのに、なぜか咳だけがいつまでも残ってしまう。そんな経験はありませんか。通常、風邪による咳は、長くても2〜3週間で自然に治まるのが一般的です。もし、咳が一か月以上も続いているのであれば、それは単なる「風邪の治りかけ」ではなく、何か別の病気が隠れているサインかもしれません。長引く咳は、医学的には「遷延性(せんえんせい)咳嗽(がいそう)」と呼ばれ、その原因は多岐にわたります。最も頻度の高い原因の一つが、「感染後咳嗽」です。これは、風邪などの呼吸器感染症によって気道の粘膜がダメージを受け、咳に対する感受性が高まってしまうことで、感染症が治った後も咳だけが続いてしまう状態です。しかし、これも通常は数週間で改善します。一か月以上も咳が続く場合、特に注意すべき病気がいくつかあります。例えば、「咳喘息(せきぜんそく)」は、喘息特有のゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難はなく、乾いた咳だけが慢性的に続く病気です。特に、夜間や早朝、会話中や運動後などに咳が悪化するのが特徴で、放置すると本格的な気管支喘息に移行することもあります。また、鼻水が喉の奥に垂れ込む「後鼻漏(こうびろう)」が原因で、喉が刺激されて咳が続くこともあります。これは、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)などが背景にあることが多いです。さらに、胃酸が食道へ逆流する「胃食道逆流症(GERD)」も、逆流した胃酸が喉や気管を刺激し、頑固な咳の原因となることが知られています。これらの病気は、それぞれ治療法が全く異なります。一般的な風邪薬や咳止めでは効果がなく、原因に応じた専門的な治療が必要です。もし、あなたの咳が一か月以上も続いているなら、それは体が発している何らかの異常信号です。自己判断で市販薬を飲み続けるのではなく、一度、呼吸器内科やアレルギー科、耳鼻咽喉科といった専門の医療機関を受診し、その咳の本当の原因を突き止めてもらうことが、つらい症状から解放されるための第一歩となります。
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大人のRSウイルス、喉の痛みはいつまで続く?
RSウイルスに感染し、喉に激しい痛みが現れた時、誰もが「このつらい痛みは、一体いつまで続くのだろう」と、先の見えない不安に駆られることでしょう。仕事や日常生活への影響も大きいため、症状の経過を知っておくことは、精神的な安心に繋がります。大人がRSウイルスに感染した場合、ウイルスに接触してから症状が出始めるまでの潜伏期間は、おおよそ2〜8日(平均4〜6日)とされています。その後、鼻水や咳といった症状と共に、喉の痛みが現れます。この喉の痛みは、発症してから2〜4日目あたりにピークを迎えることが一般的です。この時期が、唾を飲み込むのもつらい、最も苦しい期間となります。この痛みのピークを乗り越えると、喉の炎症は徐々に治まり、痛みも少しずつ和らいでいきます。しかし、完全に痛みがなくなるまでには、個人差はありますが、おおよそ7〜10日程度かかることが多いようです。風邪の喉の痛みが数日で軽快するのに比べると、比較的長く続く傾向があります。そして、喉の痛みが治まった後も、咳だけがしつこく残ることが、大人のRSウイルス感染症のもう一つの厄介な特徴です。ウイルスによって気道の粘膜がダメージを受け、過敏な状態(気道過敏性)になってしまうため、少しの刺激で咳が出やすくなります。この咳は、2〜4週間、あるいはそれ以上続くこともあり、根気よく付き合っていく必要があります。症状の経過には個人差があり、基礎疾患の有無や、その時の体調によっても左右されます。例えば、喘息の持病がある方は、咳が長引いたり、発作が誘発されたりするリスクが高まります。大切なのは、焦らず、無理をしないことです。症状のピーク時には、できるだけ仕事を休み、十分な休息と栄養、水分補給を心がけましょう。処方された薬をきちんと服用し、加湿やうがいといったセルフケアを続けることが、回復を早めるための最も確実な方法です。つらい症状には必ず終わりが来ます。そのことを念頭に置き、自分の体をいたわりながら、回復の時を待ちましょう。
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舌にできた水ぶくれ、手足口病との違いは?
夏になると、ヘルパンギーナと共に流行するのが「手足口病」です。この二つの病気は、どちらも同じエンテロウイルス属のウイルスによって引き起こされる夏風邪であり、発熱し、口の中に水ぶくれができるという点で、症状が非常によく似ています。そのため、特に舌に水ぶくれができた場合、どちらの病気なのか見分けがつかず、混乱してしまう保護者の方も多いでしょう。しかし、いくつかの特徴的な違いを知っておくことで、ある程度見分けることが可能です。最も大きな違いは、「発疹が現れる場所」です。その名の通り、手足口病は、口の中だけでなく、「手のひら」「足の裏や甲」「おしり」などにも、特徴的な水疱性の発疹が現れます。一方、ヘルパンギーナの発疹は、原則として口の中や喉の奥に限局し、手足やおしりに出ることはありません。したがって、舌の水ぶくれと共に、手や足にも発疹が見られた場合は、手足口病である可能性が非常に高くなります。次に、口の中の発疹ができる「主な場所」にも、若干の違いが見られます。ヘルパンギーナの水ぶくれは、主に喉の奥の方、具体的には軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)の周りに集中してできるのが典型的です。もちろん、舌や歯ぐきにもできることはありますが、中心は喉の奥です。それに対して、手足口病の口内炎は、舌や歯ぐき、頬の内側の粘膜といった、より口の中の前の方にできやすい傾向があります。ただし、これはあくまで傾向であり、個人差も大きいため、これだけで断定することはできません。また、発熱の程度にも違いが見られることがあります。ヘルパンギーナは、突然39〜40度の高熱が出ることが多いのに対し、手足口病は、比較的熱が出ない、あるいは出ても微熱程度で済むことが多いとされています。しかし、これも原因となるウイルスの型によって異なるため、一概には言えません。これらの違いは、あくまで一般的な傾向です。最終的な診断は、医師が全体の症状や流行状況を総合的に判断して下します。どちらの病気であっても、家庭での対症療法が中心となることに変わりはありませんが、正確な診断を受けるためにも、自己判断せず、小児科を受診することが大切です。
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夏バテの吐き気を和らげる食事の工夫
夏の暑さで胃腸が弱り、吐き気やむかつきを感じる時、食事を摂ること自体が苦痛に感じられるかもしれません。しかし、何も食べずにいると、体力はますます低下し、夏バテからの回復が遅れてしまいます。こんな時こそ、胃腸に負担をかけず、効率よく栄養を補給するための「食事の工夫」が非常に重要になります。まず、大原則は「消化が良く、胃に優しいもの」を選ぶことです。脂肪分の多い揚げ物や、香辛料を多用した刺激の強い料理は、弱った胃腸にさらなる追い打ちをかけてしまうため、絶対に避けましょう。おすすめは、おかゆや雑炊、よく煮込んだうどん、冷奴、茶碗蒸しなどです。これらは、温かいものでも冷たいものでも、人肌程度の温度で食べるのがポイントです。熱すぎたり、冷たすぎたりするものは、胃腸への刺激となります。食欲がない時は、無理に固形物を摂ろうとせず、まずは栄養価の高いスープから試してみるのも良いでしょう。かぼちゃやじゃがいも、にんじんなどを煮込んでミキサーにかけた、冷製のポタージュスープなどは、ビタミンも補給できて一石二鳥です。また、胃酸の分泌を整え、消化を助ける効果が期待できる食材を、上手に取り入れるのも効果的です。例えば、大根おろしには消化酵素が豊富に含まれており、梅干しに含まれるクエン酸は、唾液や胃酸の分泌を促し、食欲を増進させてくれます。しそやミョウガ、ショウガといった香味野菜も、そのさわやかな香りで食欲を刺激し、胃腸の働きを整える効果が期待できます。食事の摂り方にも工夫が必要です。一度にたくさん食べようとせず、少量ずつ、何回かに分けて食べる「分食」を心がけましょう。これにより、胃腸への負担を軽減することができます。そして、何よりも大切なのが「水分補給」です。吐き気がある時は、脱水状態に陥りやすいため、こまめに水分を摂ることを忘れないでください。夏バテで吐き気がある時の食事は、「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も重要です。胃腸をいたわりながら、少しずつエネルギーを補給していくことが、つらい症状からの回復への近道となります。
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危険な吐き気、夏バテと熱中症の違い
夏の時期に感じる吐き気は、多くの場合、夏バテによる胃腸機能の低下が原因です。しかし、中には、緊急性の高い「熱中症」のサインとして現れている場合があり、両者を混同してしまうと、命に関わる危険な事態を招く可能性があります。夏バテと熱中症は、どちらも夏の暑さが原因で起こる体調不良ですが、その緊急性と対処法は全く異なります。その違いを正しく理解しておくことが、自分や周囲の人の命を守るために非常に重要です。まず、「夏バテ」は、数日から数週間かけて、じわじわと現れる慢性的な不調です。主な原因は、屋外の暑さと室内の涼しさの温度差などによる自律神経の乱れや、食欲不振による栄養不足です。症状としては、吐き気や食欲不振、全身の倦怠感、無気力感などが中心で、意識がはっきりしており、会話も正常に行えます。対処法は、涼しい場所で休息をとり、栄養と水分を補給しながら、生活リズムを整えていくことが基本となります。一方、「熱中症」は、高温多湿の環境に体が対応できなくなり、体温調節機能が破綻することで起こる、急性の病態です。熱中症の初期症状として、めまいや立ちくらみ、筋肉痛(こむら返り)などがありますが、症状が進行すると、夏バテと似た「吐き気」や「頭痛」、「倦怠感」が現れてきます。ここが、見分けがつきにくい、注意すべきポイントです。しかし、熱中症がさらに悪化すると、「意識障害(呼びかけへの反応が鈍い、言動がおかしい)」「けいれん」「高体温(体に触ると熱い)」といった、明らかに異常な症状が現れます。これらの症状が見られた場合は、もはや夏バテではありません。それは、命の危険が迫っている重篤な熱中症(熱射病)のサインです。この状態になったら、すぐに救急車を呼び、涼しい場所へ移動させて、服を緩め、首や脇の下、足の付け根などを氷などで冷やすといった、応急処置を開始する必要があります。夏の吐き気を感じたら、吐き気以外の症状にも注意を払い、「意識の状態」がおかしくないか、という点を必ず確認してください。それが、夏バテと危険な熱中症を見分ける、最も重要な分かれ道となるのです。
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脳神経外科と脳神経内科その違いとは
頭をぶつけた時、あるいは頭痛やめまいなどの症状で病院を探す際、「脳神経外科」と「脳神経内科(神経内科)」という、非常に似た名前の診療科があって混乱した経験を持つ方も多いでしょう。どちらも脳や神経を専門とする点では共通していますが、その役割と得意分野には明確な違いがあります。この違いを理解しておくことは、自分の症状に合った適切な医療機関を選ぶ上で非常に重要です。まず、「脳神経外科」は、その名の通り「外科」的なアプローチ、つまり手術を主とした治療を専門とする診療科です。頭をぶつけたことによる頭蓋内出血(急性硬膜下血腫など)や、頭蓋骨骨折、脳腫瘍、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血など、物理的に原因を取り除く必要がある、構造的な異常を扱います。頭部外傷においては、CTスキャンなどの画像診断を用いて、脳に出血や損傷がないかを判断し、もし手術が必要な血腫があれば、開頭手術などでそれを取り除くのが、脳神経外科の最も重要な役割です。つまり、「頭をぶつけた」という物理的なイベントによって引き起こされた可能性のある問題を、緊急性高く診断・治療する科と言えます。一方、「脳神経内科」は、「内科」的なアプローチ、つまり薬物治療やリハビリテーションなどを中心に、脳や神経の病気を診療する科です。手術を必要としない、脳の機能的な問題からくる病気が専門領域となります。例えば、片頭痛などの慢性的な頭痛、てんかん、パーキンソン病、認知症、脳梗塞後の内科的管理などが、脳神経内科の主な守備範囲です。頭をぶつけた後、数週間から数ヶ月経ってから、慢性的な頭痛やめまい、物忘れなどの症状が続く場合に、その原因を探るために受診することもありますが、打撲直後の急性期の対応は、基本的には脳神経外科の領域となります。まとめると、頭を強くぶつけて、脳内での出血や骨折が心配されるような急性期の状況では、迷わず「脳神経外科」を受診するのが正解です。そこで緊急性の高い問題がないことが確認された上で、後から出てくる症状について相談する場合は、脳神経内科が選択肢になる、という流れを覚えておくと良いでしょう。