鼻水、咳、喉の痛み、そして発熱。これらの症状が現れた時、ほとんどの人は「風邪をひいた」と自己判断するでしょう。実際に、大人がRSウイルスに感染した場合の症状は、一般的な風邪(ライノウイルスやコロナウイルスなどが原因)と非常によく似ており、症状だけで両者を明確に見分けることは、専門家でも困難です。しかし、いくつかの特徴や傾向を知っておくことで、RSウイルスの可能性を考えるきっかけになります。まず、RSウイルス感染症の特徴として挙げられるのが、前述した「喉の強い痛み」です。もちろん風邪でも喉は痛くなりますが、RSウイルスの場合は、その痛みの程度が非常に強く、食事や会話もままならないほどになることがあります。次に、「咳の性質と期間」にも違いが見られることがあります。RSウイルスは、気管や気管支といった下気道にも炎症を起こしやすいため、痰が絡んだ湿った咳(湿性咳嗽)が出やすく、一度咳き込むと止まらなくなるような、激しい咳が続くことがあります。また、一般的な風邪の咳が1週間程度で治まるのに対し、RSウイルスの場合は、気道の過敏性が残ってしまい、咳だけが2週間、3週間と長引くことも珍しくありません。喘息の持病がある人は、発作が誘発されることもあるため、特に注意が必要です。さらに、「感染の背景」も重要な手がかりとなります。RSウイルスは、主に秋から冬にかけて流行のピークを迎えます。そして、乳幼児の間で大流行することが多いため、もし、あなたの身近に、保育園や幼稚園に通う小さな子供がいる場合、その子がRSウイルスに感染している(あるいは最近までかかっていた)のであれば、あなたの上気道炎症状も、RSウイルスが原因である可能性は非常に高くなります。家庭内での感染力は非常に強く、子供から親へとうつるケースは後を絶ちません。症状だけでの鑑別は難しいものの、「喉の激痛」「しつこい湿った咳」「小さな子供からの感染」という3つのキーワードが揃った時、それはただの風邪ではなく、RSウイルス感染症かもしれないと疑ってみる価値はあるでしょう。