まぶたが赤く腫れて、痛みやゴロゴロとした異物感がある。多くの人が「ものもらい」と呼ぶこの症状は、医学的には「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と呼ばれ、その主な原因は、まぶたにある分泌腺への細菌感染です。ものもらいの治療の基本、そして最も重要な柱となるのが、原因菌である細菌の増殖を抑え、炎症を鎮めるための「抗菌薬(抗生物質)」を用いた薬物療法です。この治療の中心となるのが、「点眼薬(目薬)」と「眼軟膏」です。眼科を受診すると、まず処方されるのがこれらの薬です。点眼薬は、液体状の薬で、日中に使用するのが一般的です。まぶたの表面から薬効成分を浸透させ、細菌の活動を抑えます。様々な種類の抗菌薬があり、医師は原因菌として最も可能性の高いブドウ球菌などに効果のある薬を選択します。点眼する際には、手をきれいに洗ってから、下まぶたを軽く引き、清潔に1滴落とすようにしましょう。容器の先がまつ毛やまぶたに触れないように注意することも、二次感染を防ぐ上で重要です。一方、眼軟膏は、その名の通り軟膏状の薬で、粘度が高いため、目の中で長く留まり、効果が持続するという特徴があります。そのため、主に就寝前に使用されることが多いです。まぶたの裏側に塗布することで、寝ている間にじっくりと薬を作用させることができます。ただし、軟膏を塗ると一時的に視界がぼやけるため、日中の使用には注意が必要です。これらの抗菌薬による治療は、症状が出始めた早い段階で開始することが、重症化を防ぎ、早期回復につながる鍵となります。治療を開始すれば、通常は数日から1週間程度で、痛みや腫れは次第に引いていきます。大切なのは、症状が少し良くなったからといって、自己判断で薬の使用を中止しないことです。処方された期間、きちんと最後まで使い切ることで、細菌を完全に叩き、再発のリスクを減らすことができます。ものもらいは、放置したり、自分で潰したりすると悪化する可能性があります。まずは眼科を受診し、適切な薬物療法を受けることが、最も安全で確実な治療法なのです。