去年の夏、私は人生で初めて、本格的な夏バテというものを経験しました。それは、7月の終わり、連日35度を超える猛暑日が続いていた頃のことです。最初は、なんとなく食欲がないな、という程度の軽い不調でした。しかし、8月に入る頃には、その症状は明らかに悪化していました。朝起きても、全身が鉛のように重く、会社へ行く気力が湧きません。昼食も、おにぎり一つを食べるのがやっとで、午後は決まって、胃がムカムカするような、乗り物酔いに似た不快な吐き気に見舞われるようになりました。特に辛かったのが、冷房の効いたオフィスから、一歩外へ出た瞬間の、あの熱風です。その温度差に、体が悲鳴を上げているのが分かりました。頭がクラクラし、立っているのもやっとの状態。食欲不振と吐き気が続くことで、体力はどんどん奪われていきました。好きだったビールも全く美味しいと感じられず、夜も寝苦しさから何度も目が覚めてしまい、悪循環に陥っていました。このままではいけない。そう思った私は、まず自分の生活を見直すことから始めました。暑いからといってシャワーだけで済ませていたのを、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるように変えました。これにより、自律神経が整えられ、夜の寝つきが少し良くなった気がします。食事も、無理に食べようとせず、まずは梅干しを入れたおかゆや、冷たい茶碗蒸しなど、喉を通りやすいものから始めました。また、意識してこまめにスポーツドリンクを飲むようにし、汗で失われた水分とミネラルを補給することを心がけました。劇的な変化ではありませんでしたが、こうした地道なセルフケアを1週間ほど続けると、あれほどしつこかった吐き気が、少しずつ和らいでいくのが分かりました。そして、少し食欲が出てきた時に食べた、きゅうりとミョウガの酢の物が、驚くほど美味しく感じられたのです。あの時の、体の細胞に染み渡るような感覚は、今でも忘れられません。この経験を通じて、夏バテを甘く見てはいけないこと、そして、日々の小さな養生がいかに大切かを、身をもって学びました。