ヘルパンギーナの発熱や喉、舌の痛みのピークを乗り越え、ようやく食事が摂れるようになると、親子共々ほっと一安心するものです。通常、ヘルパンギーナによる舌の水ぶくれや口内炎は、発症から1週間ほどで、きれいに治癒し、痕を残すことはありません。しかし、ごく稀にですが、回復後も「舌の先にピリピリとした感じが残る」「味覚が少しおかしい」といった、軽い違和感をしばらくの間訴えるお子様がいます。また、口内炎が治った後の粘膜が、一時的に赤みを帯びて見えることもあります。このような症状が続くと、保護者としては「本当に治っているのだろうか」「何か後遺症が残ってしまったのではないか」と、新たな心配事が生まれるかもしれません。ほとんどの場合、これらの回復期の症状は、一時的なものであり、時間の経過と共に自然に解消されていきます。ヘルパンギーナでは、舌の表面の粘膜がウイルスによってダメージを受け、強い炎症が起こります。その炎症が治まり、新しい粘膜が再生してくる過程で、知覚が過敏になったり、味を感じる細胞(味蕾)の機能が一時的に低下したりすることが原因と考えられています。人間の舌の粘膜は、新陳代謝が非常に活発な場所です。ダメージを受けた細胞も、比較的短い期間で新しい細胞へと生まれ変わります。そのため、通常は数日から数週間もすれば、違和感は自然と感じなくなり、味覚も元に戻ります。心配しすぎて、何度も子供の口の中を覗き込んだり、「まだ痛いの?」と繰り返し尋ねたりすることは、かえって子供に不安を与えてしまう可能性もあります。食欲が戻り、元気に遊べるようになっているのであれば、基本的には心配はいりません。ただし、万が一、回復後も強い痛みが続いたり、食事を嫌がる状態が改善しなかったり、あるいは1ヶ月以上経っても味覚の異常が続くような場合には、何か別の問題が隠れている可能性も否定できません。そのような場合は、念のため、再度かかりつけの小児科や、場合によっては耳鼻咽喉科に相談してみるのが良いでしょう。多くは一過性の心配のない症状ですが、不安な気持ちを抱え込まず、専門家に相談することで、安心を得ることができます。
ヘルパンギーナ回復後も舌に違和感が残る?