頭をぶつけて病院を受診した際、医師が「CT検査を撮りましょう」と判断することがあります。CT検査(コンピュータ断層撮影)は、X線を使って、頭部を輪切りにしたような詳細な断層画像を撮影する検査で、頭蓋骨の内部の状態、特に脳の出血や損傷、骨折の有無を、短時間で正確に評価することができます。頭部外傷の診断において、非常に重要な役割を担う検査ですが、放射線による被ばくも伴うため、全てのケースで行われるわけではありません。医師は、どのような場合にCT検査が必要だと判断するのでしょうか。CT検査が強く推奨されるのは、まず「意識障害」がある場合です。呼びかけへの反応が鈍い、刺激を与えないと目を開けない、あるいは全く意識がないといった場合は、脳が圧迫されている可能性が極めて高く、その原因を特定するために、CT検査が必須となります。次に、「明らかな神経症状」が見られる場合も、検査の対象となります。片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、けいれん発作を起こした、といった症状は、脳の局所的な損傷を示唆しており、CTでその部位を確認する必要があります。また、頭蓋骨骨折が疑われる所見、例えば、頭部に明らかな陥没がある、耳や鼻から血液や透明な液体(髄液)が漏れ出している、目の周りにパンダのような痣ができる(パンダの目徴候)といった場合も、骨折の程度と、それに伴う脳への影響を評価するためにCT検査が行われます。さらに、先にも述べたように、「血液をサラサラにする薬を服用している」場合や、「アルコールを多量に摂取している」場合も、出血のリスクが高いため、比較的軽い打撲でも、念のためにCT検査を行うことが多くなります。たとえ意識がはっきりしていても、「受傷時の記憶がない(健忘)」場合や、65歳以上の高齢者であることも、検査を検討する理由となります。医師は、これらの危険因子や臨床症状を総合的に評価し、CT検査の必要性を判断します。患者さんやご家族は、なぜ検査が必要なのか、あるいはなぜ必要ないのか、医師の説明をよく聞き、納得した上で検査に臨むことが大切です。