ものもらい(麦粒腫・霰粒腫)は、誰もが経験しうる身近な病気だからこそ、多くの人が様々な疑問や不安を抱えています。ここでは、眼科の診察でよく尋ねられる質問とその答えをいくつかご紹介し、正しい知識を持っていただくための一助としたいと思います。まず、最も多い質問が「ものもらいは、人にうつりますか?」というものです。結論から言うと、通常の麦粒腫や霰粒腫は、他の人にうつる(伝染する)ことはありません。原因は、自分の皮膚や体内に普段からいる常在菌による感染や、腺の詰まりであり、はやり目(流行性角結膜炎)のように、ウイルスが原因で次々と人に感染していく病気とは全く性質が異なります。ですから、ものもらいになったからといって、学校や仕事を休む必要はありませんし、プールに入ることも基本的には問題ありません。ただし、汚れた手で患部を触り、その手で他の人の目に触れるようなことがあれば、細菌を運んでしまう可能性はゼロではないため、手洗いはしっかり行いましょう。次に、「自分で潰して膿を出しても良いですか?」という質問もよく受けます。これは、絶対にやってはいけません。不潔な手や器具で無理に潰そうとすると、細菌がさらに奥深くへ入り込んで炎症が悪化したり、周囲の正常な組織を傷つけてしまったりする危険性があります。最悪の場合、まぶた全体がひどく腫れ上がる「眼瞼蜂窩織炎」という重篤な状態になりかねません。膿が溜まって痛みが強い場合は、自己判断せず、必ず眼科を受診し、必要であれば清潔な環境で医師による切開排膿の処置を受けてください。また、「温めるのと冷やすの、どちらが良いですか?」という質問も多いです。これは、病気の種類や時期によって異なります。細菌感染による急性の炎症で、赤みや腫れ、痛みが強い「麦粒腫」の初期段階では、冷やすことで炎症を和らげ、楽になることがあります。一方、腺が詰まってしこりになっている「霰粒腫」や、麦粒腫で膿が固まってきている段階では、温めることで血行を促進し、詰まった脂や膿の排出を助ける効果が期待できます。ただし、判断が難しい場合も多いので、基本的には医師の指示に従うのが最も安全です。ものもらいは、軽視されがちですが、正しい知識を持って対処することが大切です。疑問や不安があれば、遠慮なく眼科医に質問してください。