去年の夏、当時3歳だった娘がヘルパンギーナにかかりました。それは、週末の朝、突然始まりました。「ママ、なんだか体が熱い」。そう言ってぐったりしている娘の熱を測ると、39.5度。慌てて休日診療の小児科へ駆け込みました。診察室で口の中を見てもらうと、医師は「ああ、喉の奥にいっぱいブツブツができていますね。ヘルパンギーナです」と告げました。その時は、高熱が一番の心配で、解熱剤をもらって帰宅しました。しかし、本当の闘いはそこからでした。熱は解熱剤で一時的に下がるものの、娘はひどく機嫌が悪く、一日中泣き続けていました。そして、大好きだったゼリーを口にしても、一口で顔をしかめて泣き出し、何も受け付けなくなってしまったのです。不思議に思って口の中を覗いてみると、喉の奥だけでなく、舌の先や縁にも、赤くて小さな口内炎がいくつもできているのを発見しました。これが、娘の機嫌の悪さと食欲不振の本当の原因だったのです。舌は、少し動かすだけでも痛むのでしょう。話すことさえ辛そうで、ただただ泣きじゃくるばかり。水分だけでも摂らせようと、麦茶やイオン飲料をスプーンで口に運びましたが、それさえも「痛い!」と拒絶されてしまいました。脱水症状が心配で、私は途方に暮れました。何か口にできるものはないか。そう思い、私が試したのは、バニラアイスクリームでした。冷たい感覚が痛みを麻痺させてくれるかもしれない、という淡い期待を込めて、スプーンの先にほんの少しだけつけて、そっと娘の口に運びました。すると、娘は一瞬顔をしかめましたが、泣き止んで、こくんと飲み込んだのです。そして、小さな声で「もうちょっと」。その一言が、私にとっては暗闇の中の一筋の光のように感じられました。その日から数日間、娘の主食はアイスクリームと、凍らせたイオン飲料を少しずつ舐めさせることでした。栄養面での心配はありましたが、まずは脱水を防ぐことが最優先。舌の痛みがピークだった2日間をそうして乗り切り、3日目あたりから、少しずつ冷たいお粥や豆腐などを口にできるようになりました。子供の病気は、親の知識と工夫、そして何よりも根気が試されるのだと、身をもって学んだ数日間でした。