夏の暑さで胃腸が弱り、吐き気やむかつきを感じる時、薬に頼る前に、自分でできる簡単なセルフケアを試してみるのも一つの手です。東洋医学には、体の特定のポイントを刺激することで、不調を和らげる「ツボ(経穴)」という考え方があります。吐き気に効果的とされるツボをいくつか知っておくと、外出先などで急に気分が悪くなった時にも、心強いお守りとなるでしょう。まず、最も有名で、押しやすいツボが「内関(ないかん)」です。これは、手首の内側のしわの中央から、指3本分ほど肘側へ向かったところにあります。腕にある2本の太い腱の間に位置します。乗り物酔いにも効くとされるこのツボを、反対側の親指の腹で、少し痛みを感じるくらいの強さで、ゆっくりと5秒ほど押しては離す、というのを数回繰り返してみてください。自律神経のバランスを整え、胃の不快感を和らげる効果が期待できます。次に、足にある「足三里(あしさんり)」も、胃腸の調子を整える万能のツボとして知られています。膝のお皿のすぐ下、外側のくぼみから、指4本分ほど下がった、すねの骨の外側にあります。押すとズーンと響くような感じがする場所です。ここを、親指で心地よい強さで揉みほぐすように刺激します。胃腸のぜん動運動を活発にし、消化を助ける働きがあるとされています。これらのツボ押しと合わせて行いたいのが、腹式呼吸です。椅子に座るか、仰向けに寝て、全身の力を抜きます。おへその下に意識を集中し、鼻からゆっくりと息を吸い込みながら、お腹を大きく膨らませます。そして、吸う時よりも長い時間をかけて、口からゆっくりと息を吐き出しながら、お腹をへこませていきます。この腹式呼吸を数分間繰り返すことで、乱れがちな自律神経のバランスが整い、心身がリラックスして、吐き気が和らぐことがあります。また、ペパーミントやレモン、ジンジャーといった、爽やかな香りのアロマオイルをティッシュに1滴垂らし、その香りを嗅ぐのも、気分をリフレッシュさせ、むかつきを軽減させるのに役立ちます。これらのセルフケアは、あくまで症状を緩和するための一時的な対処法です。もし、吐き気が何日も続いたり、他の症状を伴ったりする場合は、必ず医療機関を受診してください。