子供の舌にヘルパンギーナによる痛々しい口内炎ができて、食事も摂れずに泣いている姿を見ると、少しでも痛みを和らげてあげたいと、薬局で口内炎の薬を買ってこようかと考える保護者の方もいるかもしれません。しかし、ヘルパンギーナが原因の口内炎に対して、市販の口内炎治療薬を使用することには、注意が必要です。結論から言うと、自己判断で市販薬を使用することは、基本的にはお勧めできません。その理由はいくつかあります。まず、市販されている口内炎治療薬の多くは、一般的なアフタ性口内炎(原因がはっきりしない、ストレスや疲れなどでできる口内炎)を対象としています。これらの薬の中には、炎症を抑えるためにステロイド成分が含まれている貼り薬や塗り薬があります。しかし、ヘルパンギーナのようなウイルス感染症が原因の口内炎に、ステロイド薬を使用すると、免疫を抑える作用によって、かえってウイルスの増殖を助長し、症状を悪化させてしまう危険性があるのです。どの薬が使えて、どの薬が使えないのかを、保護者の方が正確に判断するのは非常に困難です。また、市販薬には、子供への使用が推奨されていない成分が含まれていたり、年齢制限が設けられていたりするものも多くあります。特に、乳幼児に安全に使用できる市販薬は限られています。さらに、薬を塗ったり貼ったりする行為自体が、子供にとっては大きな苦痛となり、嫌がって暴れることで、かえって口の中を傷つけてしまう可能性もあります。では、どうすれば良いのでしょうか。ヘルパンギーナには、ウイルスそのものを退治する特効薬はありません。治療の基本は、あくまで子供自身の免疫力でウイルスを克服するのを待つことであり、医療機関で処方されるのも、基本的には解熱剤や、脱水を防ぐための指導といった、症状を和らげるための対症療法です。家庭でできる最も重要なケアは、薬に頼ることではなく、前述したような「食事の工夫」と「こまめな水分補給」です。痛みを和らげるために薬を使いたいという場合は、必ず小児科を受診し、医師の診断のもとで、子供に安全に使用できる薬(例えば、粘膜保護剤や、非ステロイド系の消炎鎮痛薬など)を処方してもらうようにしてください。自己判断は避け、専門家のアドバイスに従うことが、最も安全で確実な道筋です。
ヘルパンギーナの舌の口内炎、市販薬は使える?