女性が血便を経験した場合、その原因は多岐にわたりますが、性別特有の体のつくりやライフスタイルに起因するものも少なくありません。まず、女性は男性に比べて便秘になりやすい傾向があります。これは、黄体ホルモンの影響で腸の動きが鈍くなることや、ダイエットによる食事量の減少、腹筋力の弱さなどが関係しています。便秘になると、硬い便を排泄する際に強くいきむため、肛門の皮膚が切れてしまう「切れ痔(裂肛)」や、肛門の血管がうっ血していぼ状に腫れる「いぼ痔(痔核)」を発症しやすくなります。これらが、女性の血便の原因として最も頻度の高いものです。特に、妊娠中や出産後は、大きくなった子宮が腸や肛門周辺の血管を圧迫したり、分娩時のいきみで肛門に大きな負担がかかったりするため、痔が悪化し、出血しやすくなります。では、その出血が「ただの痔」なのか、それとも他の病気のサインなのかを、どう見分ければよいのでしょうか。一つの目安は、出血の仕方と色です。痔による出血の多くは、排便時に起こり、色は鮮やかな赤色(鮮血)です。トイレットペーパーに付着する程度だったり、便の表面に筋状に付いていたり、あるいはポタポタと便器に垂れたりするのが典型的なパターンです。痛みに関しては、切れ痔の場合は排便時に鋭い痛みを伴うことが多いですが、内痔核の場合は痛みを感じないことも少なくありません。一方、大腸がんやポリープなどの病的な出血の場合は、便の中に血液が混じり込んでいることが多く、色がやや暗赤色であったり、粘液が混じっていたりします。また、便秘と下痢を繰り返す、便が細くなる、残便感がある、腹痛が続くといった、排便習慣の変化や他の腹部症状を伴う場合は、より注意が必要です。しかし、これらはあくまで一般的な傾向であり、自己判断は禁物です。例えば、直腸がんによる出血は、痔による出血と見分けがつかないことも多々あります。「いつもの痔だから」と安易に考えず、出血が続く場合や、少しでもいつもと違うと感じた場合は、必ず専門医の診察を受けるようにしてください。その油断が、重大な病気の見逃しに繋がる可能性があるのです。
女性に多い血便の原因と痔との見分け方