夏になると、ヘルパンギーナと共に流行するのが「手足口病」です。この二つの病気は、どちらも同じエンテロウイルス属のウイルスによって引き起こされる夏風邪であり、発熱し、口の中に水ぶくれができるという点で、症状が非常によく似ています。そのため、特に舌に水ぶくれができた場合、どちらの病気なのか見分けがつかず、混乱してしまう保護者の方も多いでしょう。しかし、いくつかの特徴的な違いを知っておくことで、ある程度見分けることが可能です。最も大きな違いは、「発疹が現れる場所」です。その名の通り、手足口病は、口の中だけでなく、「手のひら」「足の裏や甲」「おしり」などにも、特徴的な水疱性の発疹が現れます。一方、ヘルパンギーナの発疹は、原則として口の中や喉の奥に限局し、手足やおしりに出ることはありません。したがって、舌の水ぶくれと共に、手や足にも発疹が見られた場合は、手足口病である可能性が非常に高くなります。次に、口の中の発疹ができる「主な場所」にも、若干の違いが見られます。ヘルパンギーナの水ぶくれは、主に喉の奥の方、具体的には軟口蓋や口蓋垂(のどちんこ)の周りに集中してできるのが典型的です。もちろん、舌や歯ぐきにもできることはありますが、中心は喉の奥です。それに対して、手足口病の口内炎は、舌や歯ぐき、頬の内側の粘膜といった、より口の中の前の方にできやすい傾向があります。ただし、これはあくまで傾向であり、個人差も大きいため、これだけで断定することはできません。また、発熱の程度にも違いが見られることがあります。ヘルパンギーナは、突然39〜40度の高熱が出ることが多いのに対し、手足口病は、比較的熱が出ない、あるいは出ても微熱程度で済むことが多いとされています。しかし、これも原因となるウイルスの型によって異なるため、一概には言えません。これらの違いは、あくまで一般的な傾向です。最終的な診断は、医師が全体の症状や流行状況を総合的に判断して下します。どちらの病気であっても、家庭での対症療法が中心となることに変わりはありませんが、正確な診断を受けるためにも、自己判断せず、小児科を受診することが大切です。
舌にできた水ぶくれ、手足口病との違いは?