頭をぶつけた時、あるいは頭痛やめまいなどの症状で病院を探す際、「脳神経外科」と「脳神経内科(神経内科)」という、非常に似た名前の診療科があって混乱した経験を持つ方も多いでしょう。どちらも脳や神経を専門とする点では共通していますが、その役割と得意分野には明確な違いがあります。この違いを理解しておくことは、自分の症状に合った適切な医療機関を選ぶ上で非常に重要です。まず、「脳神経外科」は、その名の通り「外科」的なアプローチ、つまり手術を主とした治療を専門とする診療科です。頭をぶつけたことによる頭蓋内出血(急性硬膜下血腫など)や、頭蓋骨骨折、脳腫瘍、脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血など、物理的に原因を取り除く必要がある、構造的な異常を扱います。頭部外傷においては、CTスキャンなどの画像診断を用いて、脳に出血や損傷がないかを判断し、もし手術が必要な血腫があれば、開頭手術などでそれを取り除くのが、脳神経外科の最も重要な役割です。つまり、「頭をぶつけた」という物理的なイベントによって引き起こされた可能性のある問題を、緊急性高く診断・治療する科と言えます。一方、「脳神経内科」は、「内科」的なアプローチ、つまり薬物治療やリハビリテーションなどを中心に、脳や神経の病気を診療する科です。手術を必要としない、脳の機能的な問題からくる病気が専門領域となります。例えば、片頭痛などの慢性的な頭痛、てんかん、パーキンソン病、認知症、脳梗塞後の内科的管理などが、脳神経内科の主な守備範囲です。頭をぶつけた後、数週間から数ヶ月経ってから、慢性的な頭痛やめまい、物忘れなどの症状が続く場合に、その原因を探るために受診することもありますが、打撲直後の急性期の対応は、基本的には脳神経外科の領域となります。まとめると、頭を強くぶつけて、脳内での出血や骨折が心配されるような急性期の状況では、迷わず「脳神経外科」を受診するのが正解です。そこで緊急性の高い問題がないことが確認された上で、後から出てくる症状について相談する場合は、脳神経内科が選択肢になる、という流れを覚えておくと良いでしょう。