夏になると子供たちの間で流行する、いわゆる「夏風邪」の代表格であるヘルパンギーナ。その主な症状として知られているのは、突然の高熱と、喉の奥にできる小さな水ぶくれ(水疱)です。しかし、この特徴的な水ぶくれは、喉の奥だけでなく、舌にも現れることがあるのをご存知でしょうか。子供が「口の中が痛い」「舌が変な感じがする」と訴えたり、よだれの量が急に増えたりした時、口の中を覗いてみると、舌の表面や縁、あるいは舌の裏側に、赤くて小さな発疹や、ぽつんとした水ぶくれ、それが破れた後の白い口内炎(アフタ)が見つかることがあります。これが、ヘルパンギーナの症状が舌に現れた状態です。ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルス属のウイルスは、主に口や喉の粘膜で増殖します。そのため、ウイルスの活動が活発な場所である喉の奥(口蓋垂の周りや扁桃腺のあたり)に症状が出やすいのですが、舌や歯ぐき、頬の内側といった、口の中の他の粘膜にも同様の病変が形成されることは、決して珍しいことではありません。舌にできた水ぶくれや口内炎は、喉の奥にできたものと同様に、強い痛みを伴います。特に、舌は食事や会話で常に動かす部分であるため、食べ物や飲み物がしみたり、舌が動くたびに痛みを感じたりして、子供にとっては非常につらい症状となります。この痛みから、子供は食事や水分を摂ることを嫌がるようになり、機嫌が悪くなったり、ぐずったりすることが多くなります。ヘルパンギーナの診断は、主に特徴的な症状と、流行状況から総合的に判断されます。舌に発疹や口内炎が見られることは、その診断の手がかりの一つとなり得ます。もし、お子様の発熱と共に、舌に痛々しいブツブツが見られたら、それはヘルパンギーナのサインかもしれません。自己判断せず、早めに小児科を受診し、適切なアドバイスを受けることが大切です。