ものもらいの治療は、多くの場合、抗菌薬の点眼や軟膏といった保存的な治療で改善します。しかし、炎症が強く、まぶたの中に膿が大量に溜まってしまい、薬だけではなかなか症状が引かない場合があります。まぶたがパンパンに腫れ上がり、痛みが非常に強い、あるいは、まぶたの縁や裏側に、白や黄色っぽい膿の点がはっきりと見えている。このような状態になった時に、医師から提案される治療法が「切開排膿(せっかいはいのう)」です。これは、その名の通り、メスなどを使ってまぶたを小さく切開し、中に溜まった膿を物理的に排出させるという処置です。切開と聞くと、少し怖いイメージがあるかもしれませんが、これは症状を速やかに改善させるための、非常に有効で安全な医療行為です。切開排膿は、眼科の診察室で、局所麻酔をしてから行われます。まず、点眼麻酔で目の表面の感覚を麻痺させ、さらに必要であれば、まぶたに直接、注射による麻酔を追加します。麻酔が効けば、処置中の痛みはほとんど感じることはありません。医師は、膿が溜まっている場所を正確に見極め、専用のメスや針を使って、ごく小さく(数ミリ程度)切開を加えます。まつ毛の生え際にできる外麦粒腫の場合はまぶたの皮膚側から、まぶたの裏側にできる内麦粒腫の場合はまぶたを裏返して結膜側から切開します。切開した部分から、綿棒などを使って優しく圧迫し、膿を丁寧に絞り出します。この処置によって、膿による圧力が取り除かれるため、処置直後から、あれほど強かったズキズキとした痛みが嘘のように楽になることがほとんどです。処置にかかる時間は、通常5〜10分程度です。処置後は、感染を防ぐために、引き続き抗菌薬の点眼や軟膏を使用します。切開排膿の最大のメリットは、治癒までの期間を大幅に短縮できることです。膿を排出することで、炎症が急速に鎮まり、腫れも早く引いていきます。膿がパンパンに溜まってしまった状態を放置すると、自然に破れて皮膚に痕が残ってしまったり、炎症が周囲に広がってしまったりするリスクもあります。膿が溜まって痛みが強い場合は、いたずらに我慢せず、専門家である眼科医による切開排膿を受けることが、最も賢明な選択と言えるでしょう。